ドラッグストアの棚から、医薬品や化粧品がごっそりと消えていく。

その数、4000点以上。

被害額にして、およそ1670万円

神奈川県警がこの窃盗団の「回収役」として逮捕したのは、49歳のベトナム人の女だった。

正直に言って、これはもう「万引き」という言葉で片づけていい話ではない

 

そしてこのニュースが流れた瞬間、ネットには怒りと一緒に、ある種の諦めが広がった。

「どうせ、また不起訴になるんだろ」と。

今回は、この事件がどれだけ組織的だったのかという中身と、みんなが口をそろえる「どうせ不起訴」という諦めが、はたして当たっているのか外れているのかを、確認できた事実を軸に追いかけていこうと思う。

噂も飛び交っているネタなので、事実とネットの憶測はきちんと分けながら書いていく。

医薬品4000点…もう万引きと呼べない事件の中身

「万引き」と聞くと、つい出来心の軽い犯罪を思い浮かべてしまう。

棚からひとつ、ポケットにそっと。

せいぜい、そんなイメージを思い浮かべる人が多いだろう。

だが今回の事件は、その言葉がいかに実態とかけ離れているかをこれでもかと突きつけてくる。

規模も、役割分担も、盗んだ品の行き先も、およそ「出来心」とは正反対の世界だ。

まずは、その規模と手口から、順を追って見ていきたい。

 

1都6県83件で被害1670万円という規模

最初に、事件の輪郭をつかんでおきたい。

今回明らかになった被害は、東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、岐阜、愛知の1都6県にまたがっている。

確認されただけで83件、盗まれた品は4000点以上、被害総額はおよそ1670万円にのぼる。

狙われたのは、化粧品、医薬品、そしてサプリメントだ。

 

一つの店で数点をこっそり、なんてかわいい話ではない。

いくつもの県境をまたいで、およそ一年がかりで繰り返されてきた「事業」なのである。

 

逮捕された49歳の女の役割は「回収役」

そして今回逮捕されたのが、千葉県内に住む49歳のベトナム国籍の女だ。

ただ、この女、自分でドラッグストアの棚に手を伸ばしていたわけではないらしい。

警察が見ているのは、「回収役」という役回りである。

 

実行役があちこちの店で盗んできた品を、一か所で受け取り、まとめて上へ引き渡す。

たとえるなら、宅配便の集荷所のような立ち位置だ。

自分の手はさほど汚さず、それでいて組織には欠かせない歯車、というわけである。

集合住宅に積まれた段ボール20箱の異様さ

この「集荷所」の中身が、なかなかに不気味だった。

警察が家宅捜索に入ったのは、千葉県内の、どこにでもありそうな集合住宅の一室。

そこには、サプリメント、目薬、化粧品が、それぞれ20箱以上も詰まった段ボールが山と積まれ、ご丁寧に梱包用の器材まで揃っていたという。

 

生活の匂いより、倉庫の匂い。

盗んだものを一時的に隠す、というレベルの話ではない。

そこはもう、立派な「発送センター」だったのだ。

実行役6人は技能実習と特定技能で来日していた

では、実際に店で盗んでいた実行役は、いったい誰だったのか。

この女より先に、すでに6人のベトナム人の男が逮捕されている。

そして、ここが何とも引っかかるのだが、彼らはいずれも技能実習生、あるいは特定技能の在留資格で日本にやってきた人たちだった。

 

本来は日本の人手不足を支えるために来たはずの人が、その滞在資格をきちんと保ったまま、夜は別の顔で店を回っていた。

断っておくが、来日する実習生の大半は、まっとうに働いている。

だからこそ、一部のこういう連中が、全体の顔に泥を塗っていくのが、腹立たしいのだ。

 

「実習先で働きながら副業で万引き」という供述

彼らの供述が、またやるせない。

「実習先で働きながら、副業として万引きをしていた」というのである。

昼は真面目に汗を流し、夜は組織の一員として棚を漁る。

副業、という言葉のあまりの軽さに思わず頭を抱えたくなる。

いや、ふざけるなと言いたい。

 

アルバイト感覚で犯罪へ片足を突っ込んでいく。

日本の若者が闇バイトで使い捨てにされていく、あの構図と、根っこはそう遠くないのかもしれない。

 

盗んだ品は最終的にベトナムへ送られる疑い

そして、盗まれた大量の医薬品や化粧品は、いったいどこへ消えたのか。

警察が見ているのは、最終的にベトナム本国へ送られていた、という筋書きだ。

日本製の薬やサプリ、化粧品は、本国では品質の高い人気商品として、いい値段で売れる。

つまりこれは、日本の店の棚を「仕入れ先」にした、れっきとした貿易ビジネスだったわけである。

ただし、仕入れ値はゼロ。

まるまる盗品、という一点を除けば、の話だが。

なぜドラッグストアばかり狙われ続けるのか

一度きりの事件なら、運が悪かった、で片づけられるかもしれない。

だが、ドラッグストアを狙った窃盗は、なぜか何年も、しつこく繰り返されてきた。

同じような手口で、同じような品が、同じように消えていく。

ここまで続くと、もう偶然では説明がつかない。

狙われ続けるだけの「理由」が、ちゃんとあるのだ。

その仕組みを、少し解きほぐしてみたい。

 

万引き摘発の79%がベトナム人という統計

ここで、多くの人が薄々感じていることを、数字で確かめておきたい。

少し前の報道になるが、2015年からの10年間で、ドラッグストアでの万引きで摘発された外国人のうち、実に79%がベトナム国籍だったという。

8割、だと…?

「またベトナム人か」という反応が反射的に出てしまうのも、こうした積み重ねがあるからだ。

その感覚そのものを、頭ごなしに「偏見だ」と切って捨てることができないのは仕方がない。

 

1件あたりの被害額は日本人の12倍

引っかかる数字は、もう一つある。

同じ報道によれば、外国人によるドラッグストア万引きの1件あたりの被害額は、日本人のおよそ12倍にものぼるらしい。

これは、外国人のモラルの低さが現れているのではないだろうか?

出来心で化粧品を一つポケットに、という話ではないのだ。

最初から換金と転売を狙って、まとめてごっそり持っていく。

だからこそ、一件の金額が跳ね上がる。

 

このあたりで、はっきりしてくる。

「万引き」と「組織窃盗」は、もう別の生き物なのだ。

実行・回収・梱包・海外送りの分業ビジネス

今回の事件が教えてくれるのは、この犯罪が、驚くほどきれいに「分業」されているという事実だ。

店で盗む実行役。

品を集める回収役。

それを梱包する者。

そして、海外へ送りさばく上位の者。

まるで一つの会社のように、役割がきっちり分かれている。

末端が一人捕まったところで、頭は痛くも痒くもない

この身軽さこそが、彼らがしぶとく生き残る理由なのだろう。

しかし、日本人として、それを許すわけにはいかない。

闇バイトと知人紹介で実行役が補充される仕組み

では、末端の実行役は、そもそもどこから湧いてくるのか。

これについてもしらべてみた。

供述によれば、ネット上のいわゆる「闇バイト」への応募や、知人からの紹介だという。

 

低い賃金にあえぐ実習生に、「ちょっと稼げる副業があるよ」と声がかかる。

一人抜けても、また一人。

使い捨ての歯車が、次から次へと補充されていく。

これでは、いくら末端を捕まえたところで、いたちごっこが終わるはずもない。

 

「日本の店は盗みやすい」と言われてしまう理由

悔しいが、こちらも認めておかなければならない。

日本のドラッグストアは、世界的に見ても防犯が緩い、と言われてしまっているのだ。

商品は手に取りやすく並べられ、店員の数は少なく、声かけも控えめ。

お客さんを疑わない、性善説で成り立ってきた日本の店の作りが、狙う側から見れば、そのまま「盗みやすい店」に映ってしまう。

私たちが当たり前だと思ってきた、あの快適さ。

それをまんまと外国人犯罪者に悪利用されてしまっているのだ。

移民受け入れに慎重になる人の気持ちもよくわかる。

 

梨5000個盗難と重ねて見る人が続出している

ちょうど同じ頃、福岡では、梨が5000個も盗まれる事件が起きていた。

犯人はまだ捕まっていないのだが、ネットでは「これもベトナム人グループの仕業では」という声が飛び交っている。

本来は別々の事件のはずなのに、人々の頭の中では、一本の線でつながってしまう。

ドラッグストアの薬も、畑の梨も、同じ「日本を仕入れ先にした窃盗ビジネス」に見えてくるのだ。

 

もっとも、梨のほうは犯人が特定されていない。

憶測だけが独り歩きしている面もあるので、そこは冷静に見ておきたいところではある。

路上でゲリラ販売する果物販売の軽トラ
果物の大量窃盗に外国人グループの影?農作物の盗難は毎年2000件超 いま、日本中の農家が、丹精込めて育てた果物を盗まれ続けている。 福岡では梨が5000個、青森ではりんごが一晩で数百個。 しかも狙...

どうせ不起訴だろ…という諦めの正体

そして、この手の事件が報じられるたびに、決まって聞こえてくる声がある。

「どうせ不起訴だろ」という、あの諦めだ。

ただ、ここには多くの人が思っているのとは少し違う「からくり」が隠れている。

 

「またベトナム人か」我慢の限界というネットの声

さて、こうした事件が続くと、ネットに溢れかえるのは怒りだ。

「またベトナム人か、としか言葉がない」

「多文化共生なんて無理だ…」

言葉は強いのだが、その根っこにあるのは、たぶん憎しみそのものではないと思う。

 

真面目に働いて、真面目に税金を納めている自分たちが、どうしてこんな不安を抱えさせられるのか。

その理不尽さへの、行き場のない苛立ち。

それが「またか」という一言にぎゅっと詰まっている気がする。

外国人の不起訴が多いのは本当?

その苛立ちに、さらに油を注いだのが、「不起訴」という三文字だった。

今月だけでも、こんな例が並ぶ。

山口では、投資詐欺で1700万円をだまし取ったとして逮捕された男が、不起訴

山梨では、空き家に侵入した男4人が不起訴。

逮捕、という景気のいいニュースの後にしれっと「不起訴」が続く。

これを何度も見せられれば、「どうせ捕まっても、お咎めなしなんだろ」と諦めたくもなる。

不起訴の先にあるもの

ただ、この「不起訴」という言葉、実は少しばかり誤解されている面もある。

不起訴と聞くと、「無罪放免、お咎めなし」と受け取ってしまいがちだ。

だが、在留資格のない外国人が不起訴になった場合、その先で待っているのは多くの場合「強制送還」である

 

つまり、日本の刑務所には入らないけれど、日本からは追い出され、再入国も長いあいだ禁じられる。

刑事罰という表の帳簿には載らないまま、母国へ黙って送り返されていく。

この「見えない出口」の存在が、「なんだか外国人だけ素通りしている」という印象をいっそう強めてしまうのだ。

 

捕まっても失うものが少ないという損得の歪み

とはいえ、である。

送還されるとはいえ、犯した側の「損得計算」を眺めてみると、やはりどこか歪んでいると感じてしまう。

 

ネットで見かけた、ある一言が、妙に的を射ていた。

「負けても千円の損、勝ったら100万円の得、居づらくなったら国に帰ればいい、そんなギャンブル、やらないほうがバカに見える」と。

盗みがバレても、失うのは自由でも財産でもなく、せいぜい「日本にいられる資格」くらい。

これでは、犯罪へ踏み出すハードルが、あまりにも低すぎる。

本当に問われるべきは、末端の損得ではない。

彼らにこんな計算をさせてしまう、この歪んだ天秤そのものなのだ。

 

最後に一つだけ。

今回捕まったのは、あくまで「回収役」の女と末端の実行役たちだ。

組織の頭、つまり一番おいしいところを吸い上げていった連中は、まだ日本のどこかで、あるいは海の向こうで、涼しい顔をしているのかもしれない。

汗水たらして働く者が損をして、盗んで売り抜ける者が高笑いする。

そんな世の中がまかり通っていいわけがないのだ。