ゾンビたばこは検査でバレない?カープ「陰性」なのに家宅捜索の謎
この騒動でいちばん人を安心させ、同時にいちばん人をモヤモヤさせている言葉がある。
「検査は陰性だった」だ。
週刊誌に売人との写真が出た矢野雅哉、小園海斗、田村俊介の3人は、検査で陰性だったと伝えられている。
それなのに矢野は7月17日に一軍の登録を外され、7月30日には自宅へ警察の捜索が入った。
今年1月、広島カープの羽月隆太郎選手が“ゾンビたばこ(指定薬物)”を吸って逮捕
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羽月選手「名前は挙げませんが他の選手も吸ってました」
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週刊誌「ゾンビたばこの売人と新たなカープ選手達の“蜜月写真”を公開します!」
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なぜか蜜月写真にサナエトークンの溝口勇児さんも登場(今ここ)— 滝沢ガレソ (@tkzwgrs) July 13, 2026
一方で、あの集合写真が撮られたのは2025年5月2日と報じられている。
そしてゾンビたばこ──エトミデートが指定薬物になったのは、その24日後の5月26日だと伝えられている。
写真の日には、まだ法律が追いついていなかったことになる。
陰性なのに疑われる選手がいて、写真の日付は法律の線の手前にある。
それでも、疑いは晴れない。
この事件が厄介なのは、白黒をつけるための道具が、どれも中途半端にしか使えないところだ。
今回は「残りの5人は誰だ」という名前当てには乗らずに、検査・日付・令状という三つの物差しを順番に当てながら、なぜこの件がいつまでも決着しないのかを書いていく。
ネットで飛び交う噂レベルの話も一部含んだ考察になることは、先に断っておく。
「陰性」なのに疑いが晴れないのはなぜか
まず、この半年で何度も出てきたあの言い回しから見ていきたい。
球団の説明である。
ここを丁寧に読むと、ファンがなぜ安心できないのかが、わりとはっきりしてくる。
球団が言ったのは「やっていない」ではない
球団本部長の鈴木清明は、この件でずっと同じ言い方を続けてきた。
「使用した事実は確認できていない」
読み流してしまいそうな一文だが、ここは立ち止まったほうがいい。
「やっていない」と「確認できていない」は、まったく別のことを言っている。
前者は否定であり、後者は報告だ。
調べた範囲では出てこなかった、という以上のことは何も言っていない。
では、その「調べた範囲」はどこまでだったのか。
じつは、そこがいまだにはっきりしない。
羽月隆太郎の逮捕のあと、球団は全選手へ注意を促し、心当たりのある者は申し出るよう呼びかけたと報じられた。
手を挙げた選手は、いなかったという。
そして羽月が公判で「周りにも吸っているカープの選手がいた」と話したあと、球団は全選手を対象に改めて調べたとされている。
だが、そのとき何をどう調べたのかは、公表されていない。
聞き取りだけだったのか。
尿を採ったのか。
髪の毛まで調べたのか。
そこが分からないまま「確認できていない」と言われても、ファンが安心しきれないのは当たり前だと思う。
ちなみに週刊誌には、球団の聞き取りに対して矢野が曖昧な答えに終始し、松田元オーナーが激怒したという話まで出ている。
これが本当なら、球団の内側でも「確認できていない」で終わらせていなかったことになる。
尿検査は「いつ採ったか」で結果が変わる
ネットでは、「陰性だったのだからセーフだろう」という声と、「あの陰性に意味はあるのか」という声が、同じ検査結果を根拠にぶつかっている。
「矢野雅哉、小園海斗、田村俊介は今更明らかになって検査をして陰性だからセーフ? お咎めなし?」
この投稿は9万回以上表示された。
これだけ伸びたのは、多くの人が同じところで引っかかっていたからだろう。
薬物の検査には、必ず「さかのぼれる期間」というものがある。
尿で分かるのは、そう遠くない過去だ。
成分によって差はあるが、日をまたぎ、週をまたげば、痕跡は薄れていく。
ましてエトミデートは、もともと手術の麻酔に使われる薬である。
体の中に長く居座るような性質のものではない。
つまり、肝心なのは陰性か陽性かではなく、いつ採った検体なのかだ。
写真が撮られたのは2025年の5月。
羽月の逮捕は2026年の1月。
球団が動いたのは、そのあとである。
もし仮に、写真の日に何かがあったとしても、半年以上たった尿から、それが出てくるとは考えにくい。
髪の毛を使えば、もっと長い期間をさかのぼれると言われている。
だが、球団がそこまでやったという発表はない。
「陰性」という言葉は強く聞こえるのに、その中身が何ひとつ公開されていない。
だから擁護する側も批判する側も、同じ「陰性」を持ち出しては、いつまでも噛み合わないままになっている。
そして説明が足りないと、人は自分で答えを探しにいく。
写真を引き延ばし、選手の手元をのぞき込む。
現場でゾンビたばこ吸ってた
方がいるんじゃないですか?
写真ズームしますね pic.twitter.com/AL25HKCTXQ— 新宿モッコリーズ (@8u07wx) July 13, 2026
NPBのドーピング検査は、この薬を探していない
ここで、もうひとつ整理しておきたいことがある。
「プロ野球はドーピング検査をやっているのに、なぜ見つからなかったのか」という疑問だ。
じつはこれ、検査が甘かったという話ではない。
NPBが公開しているアンチ・ドーピングの手引きを読むと、検査は試合の途中に、抽選で選ばれた選手に対して行われる。
全員が、毎試合、調べられているわけではない。
そして何より、あの検査が探しているのは、競技の成績を不正に上げる薬である。
筋肉を大きくするもの、持久力を引き上げるもの、そういう類のものだ。
ゾンビたばこは、それとまるで逆の薬だ。
意識をぼやけさせ、手足を震わせ、まともに歩けなくする。
プレーの役に立つどころか、選手としての体を内側から壊していくものである。
スポーツの世界が長い時間をかけて作ってきた網は、成績を上げるズルを捕まえるためのもので、自分を壊す薬を見つけるためのものではない。
だから、毎年ドーピング検査をくぐってきたことは、この件の潔白の証明にはならない。
網の目の大きさが違うのだから、すり抜けたというより、そもそも掛かっていなかったという話に近い。
Xでは「なぜ全球団の選手を検査しないのか」という声も出ていた。
「なぜに全球団選手コーチ関係者を血液検査しないんでょうか? スキャンダルを恐れて? 逆に膿を出して新たな球団の良いと思ってます。」
気持ちは、よく分かる。
ただ、これを本当にやるなら、選手のプライバシーや労使の取り決めをどうするのかという、別の重い話が始まってしまう。
そう簡単な相談ではない。
それでも、いまの仕組みでは薬物の乱用を見つけられないという事実だけは、この騒動がはっきり突きつけてしまった。
写真は5月2日、法律が変わったのは5月26日
検査でだめなら、もうひとつの物差しを当ててみたい。
日付である。
この二つの日付の間には、思ったより大きな意味が挟まっている。
24日のずれが意味すること
SmartFLASHが載せた集合写真は、2025年5月2日の撮影と報じられている。
そしてエトミデートが指定薬物になったのは、同じ年の5月26日だと伝えられている。
5月2日 → 5月26日
その差は、24日。
ここを根拠に「写真の時点では違法じゃない」と指摘する声は、Xでは早い段階から出ていた。
溝口ここにもおるのおもろすぎるやろ。
写真は5/2。ゾンビたばこが違法になったのが5/26。
こいつらの脇が甘すぎるのは確かだが、これで犯罪者扱いはできないよ。
間違いない事実は、羽月は違法になってからも継続して吸ってたということ。他の人物は尿検査して陰性だったということ。
#carp— いのえ (@yan33_jakee) July 13, 2026
指定される前のことを、いまの法律でさかのぼって裁くことはできない。
これは法の大原則で、指摘そのものは正しい。
ただ、この物差しも諸刃だと思う。
羽月が使ったとされるのは2025年の年末だ。
指定から、半年以上たっている。
そして羽月が「周りにも吸っている選手がいた」と話したのも、その時期の話としてである。
写真の日付が指定前だからといって、その後の話まで白になるわけではない。
逆に言えば、写真の日付は有罪の証明にもならない。
日付という物差しも、結局そこで止まってしまう。
それでも写真がきついのは、日付の問題ではない
では、あの写真は無意味なのか。
そうは思わない。
ただし、きついのは「違法な時期に写っていたから」ではないのだ。
写真の真ん中にいたのは、のちに薬物を譲り渡した罪で起訴される滝口涼介被告である。
そして報道によれば、この人物は選手や企業を引き合わせる「アテンダー」として動いていたとされる。
選手と撮った一枚は、こういう人間の手に渡ると、次の相手へ近づくための名刺になる。
指定薬物になる前だろうと後だろうと、そこは何も変わらない。
問われているのは違法性ではなく、誰に自分の名前を使わせていたかである。
しかも週刊誌によれば、矢野と滝口被告のあいだには、会う日程をやり取りしたLINEまであったと報じられている。
写真の場所も、集合写真の一枚きりではない。
六本木の会員制のシーシャバー、遠征先のホテルの部屋。
報じられている中身が本当なら、「たまたま同じ場にいた」では説明が足りなくなってくる。
もちろん、これは週刊誌が書いていることであって、球団も本人も認めた話ではない。
ただ、日付の物差しを当てて「指定前だからセーフ」と言うだけでは、この部分はまったく片づかない。
写真に写っていた側の説明も、いちおう出ている。
実業家の溝口勇児は7月13日、写真を撮ったことを認め、滝口被告を「プロ野球選手のコンサルをしている人物」と聞いていたと説明した。
ファンサービスのつもりで応じた、という趣旨である。
FLASHの記事の件。
これに関しては一緒に写真を撮った正直自分の脇が甘かったのかなと思っています。
でも滝口被告はプロ野球選手のコンサルをしていると聞いていて、溝口さんのファンだから選手と一緒に写真撮ってと言われたら普通撮ってしまわない?
僕のファンサ意識のせいで無用な心配をおかけしてしまい周囲の人に申し訳ない気持ちです。
これからは写真お断りするかも。— 溝口勇児 | 連続起業家 (@mizoguchi_yuji) July 13, 2026
一枚だけなら、その説明で通ると思う。
ただ、この件で本当に説明が要るのは、写真を撮った理由ではない。
その部屋に、誰が誰を呼んだのかである。
もっとも、店へ行ったこと自体を責めるのは違うだろう、という声も根強い。
普通にシーシャバーじゃないのこれ?
これがダメならプロ野球選手の有名所だいたい責任感無いことになるけど
広島ですら流川行くとカープ以外の選手もよく来るとかサイン飾ってたりする店いっぱいあるのに東京とか大阪ならもっと無法地帯でしょ— ユウキ (@yuu07616189) July 13, 2026
この言い分にも、うなずけるところはある。
夜の店に出入りしただけで人格を疑われるなら、たいていの選手が引っかかってしまう。
だからこそ、線を引くべきは店でも写真でもなく、相手が誰だったのかという一点なのだと思う。
令状が出たことの重さと、抹消された選手の立場
そして7月30日、話は検査でも日付でもない場所へ移った。
広島県警本部が、内野手の矢野雅哉と前川誠太の居宅や球団寮などを捜索したのだ。
家宅捜索には、裁判官が出す令状がいる。
警察が思いつきで人の家に入れるわけではなく、疑うだけの理由があると裁判官が判断したから、紙が出る。
Xでも、そこに気づいた投稿が伸びていた。
矢野と前川家宅捜索きたのがちか。
捜索差押令状出てんならほぼ確実に「アウト」くさくね?密航性の高い薬物事案だから現行犯とかはムズい気はするが、通常逮捕はありうるよね全然— 総長 (@homebase_Gods) July 30, 2026
ただ、令状は捜索を許す紙であって、有罪を決める紙ではない。
何が押収されたのかも、そもそも何を探していたのかも、いまのところ公表されていない。
だから、この時点で「二人はクロだ」と言うのは早すぎる。
警察が探しているのは、球団が探せなかったもの
それでも、この令状には別の意味がある。
ここまで当ててきた物差しの中で、これだけが、体の外に残ったものを見にいけるのだ。
捜索の目的は、証拠を保全することにある。
薬物の現物や、吸うための器具。
そして、スマホやパソコンに残ったやり取り、金の動いた記録。
ここが、球団の調査との決定的な違いだと思う。
球団にできたのは、聞き取りと、本人の体を調べることまでだった。
そして体の中の痕跡は、時間がたてば消えていく。
半年前のことは、もう尿からは出てこない。
だが、やり取りの履歴は、半年たっても消えない。
誰と、いつ、どこで会う約束をしたのか。
金が動いたのかどうか。
体が忘れても、機械は覚えている。
「確認できていない」という球団の言葉が宙に浮いたままだったのは、体の中しか見られなかったからでもある。
今回はじめて、まともに機能しそうな物差しが出てきたということだ。
もっとも、そこで出た答えが僕たちに知らされるかどうかは、また別の話だが。
同じ日に捜索されても、二人の疑いは出どころが違う
もう一つ、見落とされがちなことがある。
矢野と前川は同じ日に同じ手続きを受けたが、疑いの出どころは、まるで違う。
矢野のほうは、材料がすでに表に出ている。
写真があり、LINEの報道があり、球団の聞き取りへの受け答えまで書かれた。
順番としては、報道が先にあって、球団が動き、そのあとに警察が来ている。
前川は、そのどれもがない。
写真に写っていない。
滝口被告との関係も報じられていない。
前日まで一軍の練習に出ていて、翌朝に令状が来た。
つまり前川については、僕たちが知らないところで材料が積まれていたということになる。
この違いは、けっこう大きい。
ネットの疑いと、警察の疑いは、そもそも別のところを見ているのだ。
写真をどれだけズームしても、前川の名前は出てこなかったのだから。
実際、7月30日のあとネットでは「なぜ前川なのか」の説明が探され、選手のインスタグラムのフォロー関係まで持ち出された。
溝口勇児をフォローしている選手を並べた、という指摘である。
気持ちは分かるが、フォローは物差しにすらならない。
相手の許可も要らず、会ったことがなくても押せるボタンだ。
あれで人を並べていいなら、この国の大半の人間が並べられてしまう。
小園と田村は、なぜそのままなのか
ここで、どうしても引っかかるのが残りの二人だ。
写真に写っていたと報じられた小園海斗と田村俊介は、7月30日のあとも一軍に残っている。
矢野は写真という疑念で球団が外し、前川は警察が令状を取ったことで外れた。
その二つの理屈のどちらにも、いまのところ当てはまらない、ということなのだろう。
もっとも、一部の報道では球団の内側の事情まで書かれている。
主力を欠いたときの戦力への影響や、選手会の反応を考えると踏み込めない──という書かれ方だ。
これが本当かどうかは、僕には確かめようがない。
ただ、そう書かれてしまう時点で、球団は線引きの説明に失敗している。
基準がはっきりしていれば、こういう推測の入り込む隙はない。
説明のない空白は、たいてい「大人の事情」で埋められてしまうのだ。
白だった場合の話を、誰もしていない
そして、ここでもう一つ、あまり語られていない側の話をしておきたい。
もし何も出てこなかったとき、外された名前は誰が戻すのかという話である。
矢野は7月17日に一軍の登録を外された。
球団はこれを罰ではないと説明している。
疑念のある選手を一軍でプレーさせることに抵抗がある、というのが理由だった。
前川は7月30日、捜索の当日に登録が消えた。
前日まで、マツダスタジアムで一軍の全体練習に出ていたという。
罰ではない、という説明は、たぶん本当なのだろう。
だが、外から見えるのは、名前が消えた事実だけである。
クロだったなら、それは自分で招いたことだ。
しかし白だった場合、この数か月に貼られたものは、どこへ返せばいいのだろう。
疑いというのは、晴れても消えない。
そこが、この手の話のいちばん怖いところだと思う。
白黒がつかないからこそ、言葉で線を引くしかない
ここまで見てきたとおり、この件を白と黒に分ける道具は、どれも欠けている。
尿の検査は、遠い過去までさかのぼれない。
ドーピング検査は、そもそもこの薬を探していない。
写真の日付は、法律の線をまたいでいる。
令状は疑いの重さを示すが、答えではない。
だとすれば、残る手立てはひとつしかない。
球団が、自分の言葉で線を引くことである。
謝罪は、もう出ている。
7月30日には松田元オーナーが「申し訳ない」と頭を下げ、懸命にやっている選手のことを考えるとつらい、涙が出る、とまで語ったと報じられた。
気持ちのこもった言葉だと思う。
だが、そこで語られたのは心情であって、物差しではない。
そして出てきたのは、いまも囲み取材のコメントと発表文であって、正式な会見ではない。
囲み取材じゃなく
選手会も含めて正式に記者会見しなかったら収拾無理じゃない?#CARP
広島・松田オーナー「申し訳ない」と謝罪 所属2選手が家宅捜索に驚きとショックも「一生懸命やっている選手のことを考えるとつらい。涙が出る」(デイリースポーツ)
#Yahooニュース— のりさん@CARP垢 (@suehirogari50) July 30, 2026
会見をしたところで、疑いが消えるわけではない。
それでも、何をどこまで調べたのか、なぜこの選手は外してあの選手は残したのか、その基準を口に出すことはできる。
やっていないことを証明するのは難しいが、どう調べたかを説明するのは、やろうと思えばできる。
「確認できていない」という言い方のまま夏を越えれば、ファンは自分で答えを埋めにいく。
名前当ての検索が伸びて、写真がズームされて、関係のない選手まで疑われる。
すでに、そうなりかけている。
【ここからカープが逆転する方法】
30人以上いると思われる他球団の選手が明らかになり「カープの問題」ではなく「球界の問題」にする— ザガースキー (@carprospi) July 13, 2026
この騒動でいちばん削られているのは、選手の名前でも球団の成績でもないのかもしれない。
「この球団の言うことは、たぶん本当だろう」という、ふだんは意識もしない前提のほうである。
そこを取り戻すのに、検査も写真も令状も要らない。
必要なのは、順を追って話す言葉だけなのだと思う。