松本人志が、大腸にがんが見つかって手術を受けていたことを、自分の口で明かした。

7月17日、DOWNTOWN+の緊急生配信でのことである。

血便が止まらずに病院へ行ったらがんが見つかり、切除手術を受けて、すでに退院しているという。

しかも今は、横っ腹から腸が飛び出た状態らしい。

それを体の中へ戻す手術が、まだ数ヶ月先に控えているとのこと。

小学生の頃からダウンタウンを見て育った僕としては、さすがにこれには驚いた。

ただ、報道を並べて読んでみると、本人が言っている「がん」と、吉本興業が発表した「大腸の腫瘍」とでは、使っている言葉が微妙にズレているのだ。

今回は、どこまでが確定していて、どこから先がまだ分かっていない話なのかを整理しながら、松本人志がなぜ腸を飛び出させたまま笑いを取りにいくのかまで、一緒に考えていきたいと思う。

松本人志のがん告白が衝撃…

26年7月17日ダウプラの配信に出てきたのは、松本人志ただ一人。

冒頭、いきなりこう切り出した。

「血便が止まれへんって言ってたでしょ」

「病院行ったら、めちゃめちゃがんやってん」

血便については、以前の配信でも本人が口にしていたそうだ。

それを覚えていた視聴者からすると、伏線が最悪の形で回収された瞬間だったに違いない。

 

今出回っているニュースによると、体の異変に気づいたのは今春のことらしい。

受診したところ大腸に腫瘍が見つかり、切除手術を受け、入院中は病気を公表しないまま治療にあたっていたとのこと。

本人の言葉は、もっと生々しい。

「めちゃめちゃ手術して」

「大変やって」

「俺、死ぬか思ったわボケ」

 

さすが松本人志、死ぬか思ったわボケ、である。

この人の口から出ると、つい笑って安心してしまいそうになる。

だが中身は、まったく笑い事ではない。

 

ここで見落としたくないのが、言葉の使われ方だ。

本人は「がん」と言っている。

一方、吉本興業の発表は「大腸の腫瘍切除手術を受け、無事に退院しました」という表現だった。

がんと、腫瘍。

この二つは、似ているようでいて指している範囲が違う。

そこは次の章で詳しく書くとして、まず押さえておきたいのは、発表として確定しているのは「大腸の腫瘍」までだという点である。

 

それにしても、僕がいちばん「おっ」となったのは、そこじゃない。

松本人志は、そもそも検査に行かない人だった。

浜田雅功にも、よく人間ドックにいきやと勧められていた。

ダウンタウンDXで、しゅんしゅんクリニックPに人間ドックの話を振られたときも「僕は行かないですね」と即答している。

理由がまた松本人志らしくて、「検査行ってるのに、何も見つからなかったっていうのが多いでしょ」ときたものだ。

いや、見つからへんのが一番ええやん。

当時テレビの前でそうツッコんだ人は、けっこういたんじゃないだろうか。

 

そのスーパー検査嫌いが、今回は自分から病院へ行った。

車の警告ランプがついた程度なら無視して走り続けてしまう人でも、さすがに煙が出れば路肩に停めるのと同じで、血便というのはそれくらい強い信号だったのだろう。

62歳の大御所が、血便を放置しなかったこと。

(気づけばもうそんな年齢なのか…)

それは本当によかったと思う。

三つの未公表情報を推察

大腸に腫瘍があって、本人がそれを「がん」と呼んでいる。

ならば大腸がんだったのだろう、と考えるのが自然ではある。

ところが、ひとくちに大腸がんと言っても、できた場所によって呼び名も治療も変わってくるし、どれくらい進んでいたかで話はまるで変わってくる。

病名をきちんと言い切るには、最低でも三つの情報が要るのだ。

  • 発生部位
  • 病理診断
  • 進行度

そのどれもが、いまのところ公表されていない。

もちろん、ここから先に書くことは公表された材料からの推測でしかない。

それを承知のうえで、いま何が分かっていないのかを一つずつ見ていきたい。

 

結腸か直腸か分からない発生部位

大腸がんは、できた場所で名前が変わる。

肛門に近い直腸にできたものが直腸がん、それ以外が結腸がんだ。

手術のやり方も、体への影響も、この二つではけっこう違ってくる。

ところが松本人志の説明は「その腸にあったわけよ」であって、場所には触れていない。

吉本興業の発表も「大腸」止まり。

 

手がかりがあるとすれば、血便という症状のほうだろう。

出血した場所が肛門に近いほど、血は鮮やかなまま便に混じって出てくる。

だから血便が続いたという事実だけを見て、直腸やその手前を思い浮かべる人は多い。

ネットでも、医療に近い人からこんな見立てが出ていた。

超低位前方切除術というのは、肛門のすぐ手前あたりを切って腸をつなぎ直す手術のこと。

あくまで一個人の見立てではあるが、腹から腸が出ているという状況とは噛み合ってはいる

ただ、噛み合っているだけで、答え合わせのできる材料はどこにもない。

 

ちなみに、調べていていちばん驚いたのがここだ

大腸がんというのは、日本人がいちばん多くかかっているがんなのだという。

年間14万人超。

思っていたより、ずっと身近な話だったのだ。

 

良性と悪性を分ける病理診断

次が、腫瘍とがんという言葉の話。

ここは意外と、きちんと知られていない。

  • 腫瘍=体にできた「できもの」の総称。良性のものも悪性のものもある
  • がん=そのうち、悪性のものだけを指す呼び方

つまり腫瘍と言われた段階では、まだ良いほうの目も残っているということになる。

学校からの連絡が「体調不良の生徒が出ました」なのか「インフルエンザの生徒が出ました」なのかで親の身構え方がまるで違うのと同じで、腫瘍とがんの間には、それくらいの距離があるのだ。

 

今回のニュースは、その二つの言葉が一つの見出しの中に同居してしまっている。

「がんを告白」と「腫瘍切除手術」。

読んだ側は、どっちを受け取ればいいのか一瞬迷う。

 

切除した組織を顕微鏡で調べて、良性か悪性かを確定させるのが病理診断で、手術をした以上、その結果はもう出ているはずである。

だが、そこは公表されていない。

本人が「めちゃめちゃがんやってん」と言い切っている以上、悪性だったのだろうと僕は見ている。

それでも会社の発表が「腫瘍」で通されているうちは、外野が病名を確定させて書くわけにはいかないと思っている。

 

これはたぶん、隠しているという話ではない。

本人は自分の体のことを自分の言葉で話せるが、会社のほうは本人の代わりに病名を名乗るわけにもいかない。

つまり『言葉のズレ』ではなく、立場のズレ。

そう考えると、この食い違いはむしろ誠実なほうだと言える。

 

ステージと転移の有無

そして三つ目。

いちばん知りたいところが、いちばん分かっていない。

がんは進み具合によってステージ0からIVまでに分けられ、どこかへ転移しているかどうかで、その後の話がまるで変わってくる。

今回、そこは一言も出ていないのだ。

ネットでは、こんな推測も見かけた。

そう推察する気持ちは分かる。

退院してすぐ配信に出られるくらいなのだから、そこまで進んでいなかったのでは、と考えたくなるものだ。

 

ただ、ここは一つ気をつけたい。

手術が大変だったことと、ステージの重さは、必ずしも同じ話ではない。

腸を一度体の外へ出しておくやり方にしても、進んでいるから選ばれるとは限らないのだ。

つないだ腸がしっかり治るまでの間そこに便を通さないでおく、いわば養生の措置として選ばれることがある。

 

「腸が飛び出ている」という見た目のインパクトから、勝手に重さを読み取ってしまうのは早い。

逆に「もう退院したなら軽かったんやろ」と決めつけるのも、同じくらい早い。

僕らに言えるのは、その一言がまだ出てこないうちは、この話は終わっていないということくらいだろうか。

病気まで笑いに変える芸人魂

ここまで真面目に書いてきたが、当の本人はまるで深刻ではない。

いや、深刻ではないように振る舞っている、と言うべきか。

「横っ腹から今、腸が飛び出てるんですよ」

「腸って皆さん、見たことないでしょ」

普通、退院直後の第一声がこれになるだろうか。

あげく、こうである。

「前代未聞の腸飛び出たままの芸人を見てもらおうと思って」

 

見せんでいい。

ほんまに見せんでいいから、まずは身体を労ってあげて。

そう思った視聴者は、一人や二人ではないはずだ。

 

配信を見ていた人の反応が、この夜の空気をよく表していた。

笑ってしまって、申し訳なくなって、でもやっぱり面白い。

この複雑さこそが、松本人志が40年以上かけて客に仕込んできたものなのだと思う。

 

ネットでは、昔のコントを引っぱり出してくる人までいた。

伏線回収にしては、あまりに体を張りすぎである。

いや、これが天才なのか…。

 

ただ、忘れたくないことがある。

笑いに変えられるからといって、怖くないわけがない。

同じ配信で、この人は「死ぬか思ったわボケ」とも言っているのだ。

「腸飛び出たらちょっとぐらいおもろくもなくなるで」という一言だって、笑いを取りにいきながら、腹の底では自分の商売道具が鈍ることを心配しているように聞こえてしまう。

 

強がって笑いにしている、というのとも少し違う気がする。

僕には、ほかの伝え方ができなかったようにも見えるのだ。

神妙な顔で「大腸がんでした」と頭を下げる松本人志を、そもそも誰も見たくない。

そのことを、松本人志はわかっているのだろう。

再手術後に変わる松本の活動ペース

さて、これからの話をしよう。

腸を体の中へ戻す手術は、本人いわく「数ヶ月かかる」とのこと。

一般的に、こうして一時的に腸を外へ出しておく処置は、つないだところが落ち着く3ヶ月から半年ほどを目安に閉じられることが多いらしい。

その通りなら、年内いっぱいはこの状態で過ごすことになる。

 

それでも、18日の配信には予定通り出るという。

医師の指導を受けながら活動を続ける、というのが吉本興業の説明だ。

ここでDOWNTOWN+という場所が効いてくる。

地上波なら収録日も尺も本人の都合だけでは決められないが、自前の配信ならペースはいくらでも緩められるのだ。

体調と相談しながら本数を減らすことも、出る時間を短くすることも、たぶんできてしまう。

逆に言えば、これから配信の頻度がふっと落ちても、それは悪い知らせとは限らないということでもある。

 

そこまでして本人がなぜ出続けるのかは、この言葉によく出ていると思う。

笑いがなかったら、ただの腸出たおっさん。

自虐のようでいて、これは相当に切実な話である。

笑っている一瞬だけは、病人の側から芸人の側へ戻れるということだろう。

 

ネットにも、うまいことを言う人がいた。

腸が飛び出たぐらいで才能は引っ込まない。

そうであってくれたら、こんなにありがたいことはない。

 

とはいえ、だ。

いま画面の中で元気そうに見えていても、松本人志はまだ治療の途中なのだ。

次の手術を越えるまで、完全復帰がいつになるのかを外から数えるのは、たぶん野暮というものだろう。

腸飛び出たままの芸人という前代未聞の肩書きが、笑い話として過去形で語られる日は来るのだろうか。

そのときはきっと、この人はまた腸の話で笑わせにくる。

それが、松本人志という漢の生き様なのだ。