福岡の梨農園で、収穫間際の梨がまた大量に盗まれた。

その数、およそ5000個。

被害額は200万円ほどだという。

しかも2年連続でさすがに心が折れたのだろう、農園の男性はテレビの電話出演で「もう栽培を辞めます」と語ったそうだ。

「作っても作ってもこれでは」と。

聞いているこちらまで、胸が重くなる話だ。

 

そこへ手を挙げたのが、タレントのダレノガレ明美だった。

「何かお手伝いしたい」と支援を呼びかけ、あっという間に大きな反響を集めた美談となるはずだった。

ところが支援金の受付が始まった途端、ネットには妙な言葉が飛び交いはじめた。

「個人情報を抜かれるぞ」

「気をつけろ」

善意のはずの話に、なぜか警告が飛んでいる

いったい何が起きているのか調べてみた。

支援金の隣に化粧品が並ぶ違和感

まず、引っかかったのはこの一点だ。

支援金を受け付けている場所が、ダレノガレ本人がプロデュースする化粧品ブランドの通販サイトだった。

しかも「梨農園への支援金 1,000円」という項目の、すぐ隣にアイライナーの商品画像が並んでいる。

同じ「商品」の棚に、寄付と化粧品が仲良く陳列されているわけだ。

寄付のついでに日焼け止めもいかがですか、と言われているような導線になっている。

 

ネットでは、寄付をしようとサイトを開いた人が「メイクをほとんどしないので、ただいまフリーズ中」と戸惑いを漏らしていた。

この小さな引っかかりが、今回のモヤモヤの入り口になっている。

個人情報を抜かれるという警告の中身

では、飛び交っている警告の中身は何なのか。

隠さずに並べてみる。

  • 支援金だけを送りたくても、サイトの会員登録が必須になっている
  • ゲストのままでは決済できず、名前とメールアドレスの登録がいる
  • 規約上、登録した情報がマーケティングに使われることに同意した扱いになる、というネットの指摘

さらに、ダレノガレが過去に関わっていた美容クリニックの話まで、引っ張り出されている。

なぜ、梨の支援金の話で美容クリニックが出てくるのか。

ダレノガレは以前、その美容クリニックのプロデュースに関わっていた。

ところがクリニックがトラブルで炎上すると、いつのまにか名前を見かけなくなった。

その「引き際」を今回の支援金と重ねて、「またうまく立ち回っているのでは」と見る人がいるわけだ。

 

正直、疑いの目で見たくなるのも無理はないと思う。

「善意で寄付したはずが、気づいたら顧客リストに入っていた」というのであれば、誰だっていい気はしないからだ。

ただ、白と言い切る材料も、黒と言い切る材料もない

会員登録が必要なのは事実だが、それが「情報を抜くための罠」なのか「もともとある通販の仕組みをそのまま使っただけ」なのかは、まだ誰にも断定できない。

火のないところに煙が立ったのか。

煙だけが独り歩きしているのか。

クラファンを選ばなかった本当の理由

多くの人が口にしているのが「なぜ普通にクラファンにしなかったのか」という疑問だ。

これはダレノガレ本人が説明している。

僕なりに噛み砕くと、こういうことらしい。

 

クラウドファンディングには、お返しの品を準備して発送する手間がかかる。

その負担が農家さんにのしかかってしまう。

おまけに手数料も引かれる。

だったら、すでに動いている自分のサイトを使うのが一番早いし、コストも抑えられる。

農家さんに余計な負担をかけずに済む――。

 

クラファンの手数料は、ものによっては1割近く引かれることもある。

運営に一部が消えるくらいなら、既存のサイトを使ったほうが手取りは増える

廃業寸前で一日でも早く現金がほしい相手に、この「早さ」と「手取りの多さ」は、たしかに理にかなっている。

会員登録が必須になるのも、化粧品の通販サイトなら、もともとそういう作りだ。

急ごしらえで寄付の窓口を作ったから、通販の仕組みがそのまま残った。

そう考えれば、腑に落ちる部分もある。

 

しかもダレノガレは、この方法を農家の家族とも話し合ったうえで決めたと明かしている。

勝手にバズを利用したのではなく、当事者の了解を取ったうえでの窓口だ。

ここは意外と丁寧に進めているな、という印象を受ける。

募金詐欺に怒った10年前の伏線

ここで、10年前の話をひとつ。

2016年の熊本地震のとき、ダレノガレの名前を勝手に使った募金詐欺が起きた。

震災の善意につけこんで、彼女のファンから金を巻き上げようとする連中がいたのだ。

そのときダレノガレは、「私個人で募金を集めることはありません!」と強く呼びかけ、「許せない」と怒っていた

自分の名前を騙る詐欺に、本気で腹を立てていた人。

 

その本人が、10年後、自分のサイトで募金を集める側になっている。

これを「言ってることが違うじゃないか」と読むこともできる。

けれど、もう一歩踏み込むと、逆の絵も見えてくる。

名前を悪用された経験があるからこそ、あえて自分の管理下でやろうとしたのかもしれない

あのとき「勝手に集めるな」と怒った人が、今度は「自分で責任を持って集める」側に回った、とも読める。

同じ事実でも、立つ位置で見え方がまるで変わってしまうのだ。

誰が得をするのかで見える構図

善意か、偽善か。

ネットはこの二択で盛り上がっている。

「商売うますぎる」「嗅覚がすごい」という声も相当な数だ。

でも、その言葉に乗っかる前に、一度「誰が得をするのか」で地図を描いてみたい。

  • 農家さん――即金で支援が入り、返礼品の手間もない。廃業寸前で、これは大きい
  • ダレノガレ側――話題性で新しい会員が増え、化粧品ブランドの認知も上がる
  • 支援した人――善意が届く。ただし個人情報を差し出す形で

こうして並べると、誰も損はしていない。

むしろ全員が少しずつ得をする形になっている

 

問題は、その「全員が得をする」きれいな輪のなかに、善意という燃料が混ざっている点だ。

片方だけが商売の果実も受け取っていると、見ている側はどうしても寒気を感じる

「結局これが狙いだったんだろうな」という声が出るのも、この一点に尽きる。

 

もっとも、この見方には、すぐ反論も飛んでくる。

「文句を言うだけの人間より、動いた人のほうが百倍えらい」

「偽善だろうが、廃業寸前の農家が助かるなら最高じゃないか」

そんな擁護の声も、負けないくらい多い。

 

たしかに、批判は誰にでもできる。

実際に財布を開いた人の善意まで、外野が疑う筋合いはない。

商売がうまいこと自体は、罪ではない。

罪ではないが、タイミングがタイミングだけに、素直に拍手しきれない人がいるということなのだろう。

答え合わせは9月30日

ありがたいことに、この件には答え合わせの日が用意されている。

サイトには、決済手数料などの実費を差し引いた金額を寄付し、9月30日に送金する予定だと書かれている。

「全額」ではなく「実費を引いた分」と正直に明記されている点は、むしろ好感が持てる。

さらにダレノガレは、予想を上回る額が集まった場合は、別の農家への寄付も検討していると言い添えていた。

 

結局のところ、この話が善意だったのか、それとも商売の匂いが混ざっていたのかは、9月30日に、いくらが、どこへ、どう届いたかで決まる。

言葉ではなく、着金で答えが出る

疑うのも、拍手を送るのも、その数字を見てからでいい。

盗まれた梨は、もう戻ってこない。

それでも、集まった金がちゃんと農家さんの手に渡って、来年もういちど甘い梨が実ってくれたなら、この騒ぎにも意味があったと思えるのかもしれない。