2026年10月20日、宮崎県に住む56歳の、自称「音楽制作業」の女性が、大麻を使った疑いなどで逮捕されたと宮崎放送が報じた。

報道に「Ree.K」というDJ名は出てこない。

それでも、昔、野外のパーティーに通っていた人間なら、「宮崎」「音楽制作業」「56歳」の3つで、これ、Ree.K(リー・ケー)じゃないかとピンときたはずだ。

Ree.Kは1990年代から、野外で夜通し踊るレイブの現場で音を鳴らしてきた女性DJで、実は僕も若いころ、野外のパーティーで何度かその音を浴びたことがある。

驚きより先に「運が悪かったね」という言葉が口をついて出た人も多いと思うが、界隈ではまぁそんな感じだろう。

今回はこの件について情報をまとめてみようと思う。

電柱事故から始まった逮捕

宮崎放送によると、疑いは麻薬及び向精神薬取締法違反だ。

ことの始まりは2026年8月、宮崎県都城市で女性が運転していた車が電柱にぶつかった事故で、そのとき車の中から大麻のにおいがしたことから、警察が調べを進めていたという。

報道によると、疑いは3つある。

  • 2026年8月上旬に大麻を使用した疑い
  • 都城市内で、LSDを含む紙片2枚を持っていた疑い
  • 自宅で、大麻0.1グラムを持っていた疑い

 

まず、女性は使ったことについては認めている。

一方で、紙片については「知らなかった」、自宅にあった分については「私のもので間違いないが忘れていた」と話し、疑いの一部は認めていないという。

警察はいま、どこから手に入れたのかを調べているところだ。

1992年から回してきたRee.Kの経歴

2022年のインタビューでは、Ree.K本人がその年の5月に自宅がある宮崎でパーティーを開いたと話していて、宮崎で暮らしていることは本人の口からも語られていた。

東京都出身のRee.Kが最初にDJをしたのは、友達同士で企画した下北沢のパーティーで、そのあとは渋谷の小さなクラブで、毎週日曜の朝から自由にプレイさせてもらっていたと、DJ活動30周年のインタビューで話している。

 

  • 1980年代半ば 曲作りを始める
  • 1992年 DJとして活動を始める
  • 1997年 パーティー「Space Gathering」が始まる
  • 1998年 電子音楽のバンド「Kinocosmo」を結成
  • 2001年 雑誌『FLOOR』の表紙、リーバイスやG-SHOCKの広告のイメージキャラクター
  • 2012年 九州へ拠点を移す
  • 2022年 DJ活動30周年

伝説のパーティー「EQUINOX(イクイノックス)」には2回目の開催から加わり、そこでは初めは映像を流すVJとして、1996〜97年ごろからはDJとしても関わっていた。

そしてRee.Kといえば、MASAとともに主宰したパーティー「Space Gathering(スペース・ギャザリング)」、日本語にすれば「宇宙集会」だ。

Ree.Kはこの宇宙集会から、国内のレイブシーンづくりに関わってきた。

 

トランスのパーティーではトランスを、テクノのパーティーではテクノを回してきた人で、本人は、根がパンクだから、ジャンルのあいだにある見えない壁をしれっと壊していくのが自分の役割なんだ、とも話している。

思い出していちばんに出てくるのが、まずいカレーで怒られた話っていうあたり、いかにも野外パーティーである。

海外でも、10か国以上で回してきた。

30代の半ばにはレイキ(手を当てて心身を整える民間の療法)のヒーラーになり、そこから音が艶っぽく柔らかく変わったと本人は振り返っている。

 

九州では、自給自足に近い暮らしをしながら曲を作ってきた。

本人のプロフィールには「天と地を音で繋ぐシャーマン」と書かれていて、若いころは「革命を起こしてやる」という気持ちだったが、あとになって、革命は自分の内側で起こるものだと気づいた、とも語っている。

夜通し踊ったあと、朝日のなかで音と景色がひとつになっていく…。

その瞬間に魅入られた人間はきっと少なくないだろう。

ちなみに30周年のインタビューの最後、40周年へ向けた次の10年の目標を聞かれて、Ree.Kが返した答えは「愛。健康。純粋さ。」だった。

フェスのタイムテーブルから消えたREE.K

界隈の人間がRee.Kの名前を挙げるのには、もうひとつわけがある。

今週末の10月23日から群馬の山の中で開かれる野外フェス「SAWAGI FESTIVAL 2026」は、7月の第一弾の発表で、REE.Kの出演を告知していた。

紹介文は「唯一無二のサイケデリックジャーニーを描き続けるREE.K」。

10月6日の第三弾の発表でも、出演者の一覧にREE.Kの名前はちゃんと残っていた。

 

ところが、報道が出た翌日の10月21日にフェスが出したタイムテーブルには、第一弾から並んでいたDJの中で、REE.Kの名前だけがない。

フェス側は、名前が消えた理由を何も告知していないが、まぁそんなもんだ。

今週末、群馬の山の中で朝日に向かって鳴るはずだったREE.Kの音が、何の説明もなくそっと消えたというので察した人も多いだろう。

界隈の暗黙ルール

あの頃、踊っていた僕らにとって、森や海辺の野外パーティーは祈りや儀式に近いものだった。

そういう空気の中で、大麻やアシッドは「自然に近いもの」「感覚をひらくもの」として、正直、わりと近いところにあったりする。

 

しかし、同じパーティーに集まる僕らのあいだでも、シ◯ブだけははっきり嫌われていた。

あれは自分の快楽だけをむさぼって人を壊していくもので、ほかとはまったく別ものだと、僕らは思っていた。

だからあれに手を出しているやつは、それを仲間には言わずに黙っていたりする。

ところが、その線引きがいまも生きているのかというと、かなり怪しい。

今回の件とは別の話だが、同じ宮崎では2026年10月14日、20代の男7人が、Xで客を集めて錠剤のシ◯ブと大麻を一緒に売っていた疑いで逮捕されている。

受け渡しは駐車場や路上だったという。

僕らが引いていたあの線は、売る側にとってはもう、ただの品ぞろえの違いでしかないのかもしれない。

「時代も変わった」と言えばそれまでだけど。

2024年12月から大麻は使うだけで罪

ただ、僕らのころと今とで、ひとつ大きく変わったことがある。

持っていれば昔から捕まったが、使ったことそのものを罰する決まりは、昔の大麻取締法にはなかった。

それが2024年12月12日の改正で、使っただけでも罪になった。

今回「使用した疑い」がかかっているのも、そのためだ。

日本は世界的にも大麻後進国だが、規制はどんどん強まってきている。

「また」と言われる2023年の宮崎の件

「また」「2回目」と言われているのは、3年前にも宮崎で似た逮捕のニュースがあり、そのときもRee.Kの名前を挙げる声が出ていたからだ。

2023年7月24日には、宮崎の自宅で大麻を持っていたり育てていたりした疑いで男女2人が逮捕され、練り込んだバターなども含めて約580グラムが押収された、というニュースが流れていた。

ただ、逮捕されたのがRee.Kだったのかも、そのあとどう決着したのかも、はっきりしたことは分かっていない。

 

分かっているのは、そのあともRee.Kの名前が表舞台から消えなかったことだ。

2024年12月には、SAWAGI FESTIVALの忘年会として西麻布で開かれた一夜に、「女性トランスDJのパイオニア」として出演が告知されている。

今回も「2回目だから弁当(執行猶予=刑の執行をしばらく待ってもらえる仕組み)つかんよ」と心配する声が出ている。

責める声より先にこういう心配が出てくるのは、クラブ界隈の現場ではよくあることだし、ある意味社会からはぐれた人たちの受け入れ先として回っていたりするものなのだ。