TBS冒険少年のやらせ、本当の問題点

2022年新春に放送されたTBS『アイアム冒険少年』というバラエティ番組がやらせだと炎上している。

僕もリアルタイムで子供たちと一緒に観ていたのだが、「まさかやらせだとは思わなかった…!」とはさすがに思わない。

ただ、文春オンラインTVに決定的なやらせ写真や動画が流れてしまったことで、思いの外この話題が尾を引いている。

興味深い話なので色々と調べてみたら、やらせ発覚は番組制作スタッフの労働環境の酷さから出た『告発』とのこと。

普通に考えて、僕はこちらに嫌悪感を抱いてしまった。

そして、これこそがテレビ嫌いが加速する本当の理由ではないかと思っている。

今回はこの問題について思うことを書いていく。

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アイアム冒険少年のやらせとは?

2022年の新春に放送した『アイ・アム・冒険少年』(TBS)で、あばれる君が無人島から脱出するという企画があった。

この企画はバッグ一つで無人島へ行き、そこから個人の知恵と能力を絞ってサバイバルよろしく島から脱出してください、というものだ。

この番組でのあばれる君は『サバイバル能力が高いタレント』と認知されていて、どんなアイデアで無人島で生き延び、どんな筏(イカダ)を作って島から脱出するかが見どころとなっている。

要は、無人島を使って人間のサバイバル能力を楽しむ。

そんなバラエティ番組だ。

 

しかし今回、番組スタッフの内部告発により『実際は以下のような仕込みやサポートがあった』ということが暴露されてしまったのだ。

ヤラセの内容
  • あばれる君がひとりで作ってるように見える筏(いかだ)はスタッフが作っていた
  • 自分で漕いで脱出するはずの筏はスタッフが乗る船からロープで引っ張られていた
  • サバイバルに使う道具はスタッフが加工していた
  • 島で偶然見つけたような資材は仕込み
  • 同日対決と思わせるハリセンボンは結局別撮り

ハリセンボンと同日対決をしているかのように見せた演出

ある程度日常的にネットを使う人なら、このようなバラエティ番組の演者が何もかも一人でやっているとは思わないはずだが、アイアム冒険少年のやらせに対してTBSを非難する声は結構多かった。

 

TBSからはこの騒動を受けて、「安全面を考慮し、専門家の指導の下、出演者とスタッフが一緒に作っています」と回答。

僕もいち視聴者として、これには

「でしょうね」

といった感想しか出てこない。

 

実際、コメント欄や掲示板などでは以下のような意見があった。

  • だったら注釈を入れて過剰演出をしなければいい
  • TBSは本当にヤラセが多いな…
  • 昔からテレビってそういうものだと思ってた
  • できない企画ならやるなと言いたい
  • テロップを入れないから批判されても仕方がない

「まさかやらせとは思わなかった」という人はほとんどいなかったように思うが、「この番組が好きな子供がやらせを知って楽しめなくなるのが心配」みたいなコメントには少し頷くところもあった。

というのも、それを本当だと思って楽しんでいる子供たちは全国にかなりの人数いると思うからだ。

サンタクロースが本当にいると思う大人はいないが、バラエティをガチだと信じて疑わない大人になってしまったら、親としてはちょっと心配になってしまう

宣伝広告を目的としているテレビの情報を俯瞰して見られないと、テレビによっていとも容易く情報操作されてしまうからだ。

 

そして、この問題でもうひとつ考えさせられたのは『スタッフからの告発』だ。

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テレビ嫌いが加速する本当の理由

そもそもこの『アイアム冒険少年』のやらせが発覚したのは、労働環境の酷さと過剰演出に嫌気がさしたスタッフからの内部告発だという。

子供が楽しむような番組なので一見クリーンな内容なのだが、制作に携わったスタッフは睡眠もとれないほど過酷な作業に追われるのだそうだ。

なぜなら『ヤラセ』が外に漏れないようにスタッフは最小限にならざるを得ないからで、人数が少ないから労働も過酷になっていく。

さらに毎回良いものを要求されるため、演出も過剰になっていく。

特に今回はゴールデンでの正月特番。視聴率もそれなりに求められる。

そんな中、少ない人数で回していかなきゃいけないので、正にブラック企業さながらの労働環境となるわけだ。

今回、文春に告発したスタッフの話によるとロケ5日間ほとんど寝れないこともあったそうだが、もしそれが本当ならたとえその仕事が好きだとしても過酷というレベルを超えている。

この数字を追うためにスタッフを使い倒す古い体制。

これに反感を抱くのは僕だけだろうか?

 

たとえば、テレビに映し出される演者が大変な目に遭っていても、それはちゃんと番組として成り立つようにフォローされる。さらにスタジオでその映像を観るだけのMCがギャラが高かったりする。しかし、制作スタッフは散々こき使われ、日の目を見ることがない上に、彼らの給料は普通のサラリーマンと変わらない。

僕の知り合いにも、過去、番組ディレクターをしていた知り合いがいたが、彼女は1ヶ月のうちほとんど家に帰らずに仕事していると言っていた。

「忙しい、忙しい」と言いながらも充実してそうだっので、その時はそういうものだと思っていたが、冷静に考えると家に帰れないほど仕事をするのはかなりブラックではないか?

 

長時間にわたる過酷な撮影、やらせ演出の噂で、スタッフが中々増員されないこともあり、労働環境も杜撰なものになっています。ロケ5日間ほぼ寝れない、ということもあります。

出典:文春オンライン

今回のやらせの件で、TBSは番組の安全性について釈明をしていたが、僕としてはこの労働環境の酷さについての説明が欲しかった。

フリーランサーや経営者であれば納期などの交渉もできたり、後で収入として報われたりすることがあるが、番組ADなどの制作スタッフはある程度法律で守ってあげないと過労死などのリスクを背負うことになる。

実際、やらせを文春にたれ込まれるくらいだから、やっぱりその内情は相当酷いんじゃないかと推察してしまう。

だからこそ、TBSが説明するのはやらせについてではなく、スタッフをこき使っているその労働環境の劣悪さなわけで、それについての話が一切出てきてないのがもどかしい。

そういう部分を隠しながら、やらせや過剰演出もなんのそので華やかな世界を作り上げて数字を取ろうとするテレビは、なんかもうこの先に時代に合っていないような気がしてならない。

とはいえ、改善してほしいのはその点だけで、あとは視聴者がメディアリテラシーを高めて各々好きな番組を愉しめばいい。

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やらせはそんなに気にならないけど…

今、テレビは企業コンプライアンスが厳しいため、色々な制約の下でいかに興味を引く番組を作ろうかと日々努力している。

そのため「専門家の指導の下で行っています。絶対に真似しないでください」というテロップもよく見かけるようになった。

いっそのことAVのように冒頭で「この作品はすべてフィクションです」と表示すればいいのでは? とも考えたが、視聴者がどのタイミングでテレビを観るかがわからないので、やはりシーン毎に注釈やテロップを入れなければならないのだろう。

たしかに「これはフィクションです」みたいなテロップがずっと出てくるのはハッキリ言って野暮だし、番組を楽しみにしている視聴者としては興ざめする部分はある。

 

アイアム冒険少年、あばれる君が作った仕込みの釘「※スタッフ作です」と注釈は入れづらい…

となると、テレビ局側からの何らかの対策を期待する前に、テレビを観てる側の我々がメディアリテラシーを持つのが手っ取り早い。

メディアリテラシーとは

テレビやネットなどの情報をうまく処理する能力。

情報を得る時に、発信する側の情報操作や悪意を見抜き、惑わされないようにするためのスキルのこと。

メディアリテラシーについては、こちらの記事『神田沙也加のニュースをテレビが報じない理由』も参考になるのでぜひご一読を。

 

たとえばバラエティ番組の場合だと、ある程度『台本』や『仕込み』があって成立している部分があることを理解した上で、完成された作品(放送されている番組)を楽しむということになるだろうか。

今回の場合なら、あばれる君が無人島でなんか頑張ってて面白いなー、と束の間の娯楽として観る大人の目を持つという感じだ。

YouTubeという対抗馬がでてきている現在、そういう目が視聴者にないとテレビというコンテンツはどんどん衰退していくだろう。

 

僕はクレイジージャーニーという番組が好きだったが、爬虫類ハンター加藤英明の回で仕込みが暴露された時も、「まじかー」くらいの印象でそれ以上は特になんとも思わなかった。

それよりも、その仕込み(やらせ)が原因でクレイジージャーニー自体が終わってしまったことの方が何倍もショックだった。(そのあとコロナ禍の世となってしまったのでいいタイミングではあったとは思うが残念は残念)

このやらせも、人気MC3人(松本人志・設楽統・小池栄子)の期待に応えたいがためにスタッフがつい行き過ぎた演出をした結果らしいが、視聴者にメディアリテラシーが備わっていれば「ドンマイドンマイ」って感じで見逃せたりする余地も生まれるかもしれない。

もちろん、公共の電波を使って嘘を垂れ流すのは以ての外だが、視聴者だってある程度の演出を受け入れることは可能だ。

それよりもTBSがスタッフをこき使ってる裏が暴かれながら、そのことを不問にしているところが腹立たしいし、時代に逆行したブラック企業体制で巨額の金を動かしているところに嫌悪感を持ってしまった。

 

そんなわけで今回は『アイアム冒険少年』のやらせについて色々と思うことを書いてみた。

まとめとしては、この番組を楽しんでいるキッズも多いので、あまり野暮なことは言うべきではないなと再確認した次第だ。

そもそも番組名が『アイ・アム・冒険“少年”』なんだから、家族で楽しめる番組に大人がヤイヤイと言うのは控えめにして、その陰で過酷な労働を強いている元凶に目を向けたいところだ。

TBSがそうなのか、その下請けの制作会社がそうなのかはわからないが、末端のスタッフはやっぱり過酷な労働を強いられてるんだなと思ってしまった。

YouTubeのひろゆきの切り抜き動画で見たのだが、それでも労働環境を改善しないブラック企業は潰したほうがいいらしいので、その場合はどんどんやらせを告発してダメージを与えればいいだろう。

でも、それはお互いにとって不利益な話なので、そこで働くスタッフがやりがいを感じるような労働環境へと改善していってほしいと思う。

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