奈良市議のへずまりゅうが、8月12日の昼、コンビニで小学校低学年くらいの子供からお菓子を差し出されたという。

そばにいた母親が「ほら買ってもらい」と言うのが聞こえたらしい。

急いでいるからごめんね、と断ったら、母親には睨まれて舌打ちをされたそうだ。

この話はネットでかなりの反応を集めていて、声はほとんど「常識がない」の一色だった。

ただ、その中に混ざっていた別の指摘のほうが気になった。

あのお菓子、買っていたら法律に触れていたのではないかという話である。

へずまりゅうが子供にお菓子をねだられた話

奈良のコンビニで、自分のほうをじっと見ている親子がいたので近寄ってみたら、母親が子供に「ほら買ってもらい」と言っているのが聞こえたのだという。

そして小学校低学年くらいの子供が、おもちゃ付きのお菓子をこちらへ差し出してきた。

「これいいですか?」

 

要するに、初対面の他人に、自分の子供の菓子代を出させようとしているわけである。

しかも母親のほうは自分の口では何も言わず、頼む役だけを子供に振っている。

スーパーの菓子売り場で「買って」と粘る子供に大人が弱いことを、この母親はよく知っていたのだろうと思う。

へずまりゅうは急いでいるからごめんねと断って、その場を離れたという。

母親には睨まれて舌打ちまでされたが、言い返しもせずそのまま流したそうだ。

絡んだり撮影したりすれば「また迷惑系だ」と言われて、切り取られるのは向こうではなく自分のほうになる——それが分かっていたからなのだろう。

迷惑系というのは、店や人に迷惑をかける様子を撮って稼いでいた頃の呼ばれ方である。

市議になったいまでも、その名前だけは消えていない。

自分の立場をそこまで計算したうえで黙って帰ったあたりは、正直かなり冷静だと思う。

 

気になるのは、なぜ自分が狙われたのかという一点。

熊本へ物資を届けている姿がよく流れているから何でもくれる人だと思われたのかもしれない、と本人は書いていた。

そして数分後に、こうも書き足している。

「逆に買ってくれそうに見えるんですかね?」

投稿するか迷ったけれど、罪悪感みたいなものがいつまでも抜けないので皆さんに聞いてみることにした、とのことだった。

断ったほうが後から気に病んでいるというのが、なんとも後味の悪い話である。

差し出した子供のほうは、たぶん自分が何をさせられていたのかも分かっていない

買ってあげると公職選挙法違反?

へずまりゅうは、2025年7月の奈良市議選に無所属で立って8,320票を集め、全体3位で当選した現職の奈良市議である。

そしてこの立場になると、ふつうの人にはかかっていない縛りがひとつ増える。

 

自分の選挙区の中にいる人へ、お金や物をあげてはいけない

 

法律ではこれを「寄附」と呼ぶのだが、募金や寄付金という言葉から想像するより範囲がずっと広くて、金でも物でも、ただで渡すものはひととおり入ってしまうらしい。

しかも公職選挙法は、それを時期も名義も問わずに禁じている。

どのくらい広いのかというと、こんなものまで引っかかる。

  • お中元やお歳暮
  • 祭りへの寸志や差し入れ
  • 成人式の記念品
  • 葬儀に出す供花や花輪
  • 結婚祝い(自分が披露宴に出て手渡す場合をのぞく)

要するに、近所付き合いでやる程度のことはほとんど全部アウトなのだ。

逆に許されているほうを数えてみると、親族へ渡すもの、自分が披露宴に出席して手渡す祝儀、葬式当日の香典、会費制の集まりで払う正規の会費くらいしか残らない。

破れば50万円以下の罰金で、項目によっては公民権停止まで付いてくる。

選挙に出ることも投票することもできなくなるやつだから、議員にとっては実質的に政治生命の話である。

 

つまり、コンビニのおもちゃ付きの菓子ひとつであっても、相手が奈良市民ならアウトになりうるわけだ。

数百円の菓子と議員バッジを取り替えるようなもので、割に合う取引ではない。

このことに気づいた人はネットにもいて、投稿から7分後にはもう同じ指摘が上がっていた。

そこへさらに、もっと嫌な角度から書いている人がいた。

渡しているところを、別の第三者に動画で撮られていたら——。

へずまりゅうからすると、ゾッとする話である。

あの場で財布を出していたら、渡す瞬間がそのまま誰かのカメラに収まっていたわけだ。

誰がへずまりゅうの足元を掬おうとしてるのか

そうなると、次に浮かぶのはこの疑問。

あの親子は、本当にただのずうずうしい人だったのだろうか。

ネットでいちばん反応を集めていたのも、そこを疑う声だった。

疑いたくなる気持ちは、よく分かる。

並べてみると、たしかに出来すぎてはいるのだ。

  • 先に母親が「ほら買ってもらい」と指示している
  • 子供がすぐに商品を差し出している
  • 断られた瞬間に舌打ちが出ている

 

とはいえ、あの母親が公職選挙法を知っていたと決まったわけでもない。

テレビやネットで見かける人はお金を持っている、くらいの感覚だった可能性も普通にある。

白とも黒とも言い切れる材料は、外側からは出てこない

 

ただ、仕掛けだったと考えると、この一件はよく出来ている。

  • 買えば違反の証拠が残る
  • 断れば、子供を突き放した冷たい議員という絵になる

どちらを選んでも向こうの手札が増えるという形になっているのだ。

現に本人は、断ったのに罪悪感が抜けないと書いていた。

あれは、どちらを引いても痛い二択だったのだ。

 

それと、調べていて手が止まったところがある。

公職選挙法が禁じているのは、政治家が贈ることだけではない。

 

有権者の側が、政治家に物をねだることも禁止されているのだ。

 

それどころか、当選や被選挙権を失わせる目的で要求した場合は処罰する、とまで書いてある。

被選挙権というのは、選挙に立候補できる権利のことである。

つまりこの法律は、政治家の首を取るために物をねだる人間まで、あらかじめ想定してあるわけだ。

わざわざ条文になっているということは、過去に本当にやった人間がいたのだ。

 

だから今回が誰かの仕掛けだったのかどうかは、正直まだ分からない。

分からないが、こういう手が実在するから条文に書いてある、というところまでは言える。

奈良にいるあいだ、へずまりゅうは市民にお菓子ひとつ買ってやれない。

熊本まで物資を運んでいる人が、地元では数百円のお菓子で足元を掬われる。

窮屈な話ではあるが、この決まりは、金と物で政治家に近づく人を減らすために作られたものらしい。

あのお菓子を、誰が誰のために選んだのか。

たぶんもう、確かめようがないのだろう。