渋谷のスポーツ施設で、更衣室のロッカーから客のクレジットカードを盗んだとして、慶応大学4年の22歳の女子学生が逮捕された。

盗まれたのは2026年4月5日の夕方で、使われたのはその4日後。

新宿の商業施設で、化粧品を2点(1万3970円分)である。

この学生は施設の受付でアルバイトをしていて、施錠されたロッカーをマスターキーで開けたとみられている。

同じ手口の被害は、施設全体で100万円ほどにのぼるという。

 

ネットではすぐに「病気なんじゃないか」という見方が広がり、「クレプトマニア(窃盗癖)」という言葉もちらほらと見かける。

普通であれば、そこで欲を抑え込めるのが人間だ。

慶応大生ともなれば、それくらいは当たり前にできるものだと思っていたのだが、こういった手癖の悪さには色々と事情があるようだ。

今回はその辺りをくわしく調べてみたので、気になる方は続きを読んでみてほしい。

慶応大4年の女子学生が盗んだもの

まず、何が起きたのかから書いておきたい。

カードが盗まれたのは2026年4月5日、午後3時から5時20分のあいだ。

場所は渋谷区広尾にあるスカッシュ専用の施設で、被害にあったのは50代の女性である。

そのカードが使われたのが4月9日の午後5時半。

新宿の商業施設で、化粧品を2点買っている。

逮捕は同年8月17日で容疑は窃盗と詐欺の2つがついた。

 

詐欺という言葉が急に出てきて戸惑うかもしれないが、他人のカードで買い物をする行為は、店に対して「これは自分のカードです」と嘘をついて商品を受け取ったことになる。

だからカードを盗った時点で窃盗、店で使った時点で詐欺と、罪が2つに分かれるわけだ。

 

本人は使ったことを認めていて、「欲しくなって衝動的に使った」と話しているという。

ただし、カードの入手経路については「更衣室で拾った」と説明している。

一方で警察のほうは、受付担当だったこの学生がマスターキーで施錠されたロッカーを開けたとみている。

 

そして被害は、この1件では終わっていない。

同じ手口で他の利用客のカードも狙われていて、施設全体の被害額は100万円ほどとみられている。

化粧品2点で1万3970円。

その1件だけを見れば、ドラッグストアでもあり得る金額である。

しかし、同じ手口の被害総額は100万円で、しかも一人ぶんではない。

盗まれた側からすれば、財布ごと持っていかれたわけでもなく、暗証番号を教えたわけでもない。

鍵をかけたロッカーが、セキュリティの役目をしていなかったという話である。

『こういう子いたよね』が当たっている話

今回の件でいちばん大きく広がったのが、この投稿だった。

小学校のとき、クラスで物がなくなる時期というのが、たいてい一度はあった。

クラスメイトの持ち物、学校の備品、集金袋。

先生が「正直に言えば怒らないから」と黒板の前で言って、教室がしんと静まり返って、それで結局そのまま終わる。

犯人はわからないままなのに、「たぶんあの子だよね」という空気だけがクラスの中に薄く残る。

 

あの空気を思い出した人が、今回これだけいたということだ。

そして、その記憶にはこんな一言がぶら下がっていた。

言い方はきついが、うなずいてしまう人は多いのではないだろうか。

 

つまり、この手の『癖』はなかなか治らないイメージがあるのだ。

もちろん、子供の時期にありがちな一時の迷いで済む場合もあるが、22歳という年齢でそれを行っている場合はなんとなくそう思ってしまう。

悪い癖が分別を通り越してしまっているからだ。

クレプトマニアの基準に当てると合わないもの

ネットでもう一つ大きかったのが「病気ではないか?」という見方である。

ここで名前が出てくるのがクレプトマニアで、日本語では窃盗症という。

医学の診断基準では、次の5つが挙げられている。

  • 自分で使うためでもなく、お金のためでもなく、盗みたい衝動に逆らえないことが繰り返される
  • 盗む直前に緊張が高まる
  • 盗んでいるあいだに快感や満足、解放感がある
  • 怒りや仕返しのためではなく、幻覚や妄想によるものでもない
  • 他の病気や反社会的な性格では説明がつかない

患者は女性のほうが多いとされていて、うつや摂食障害と一緒に出ることも珍しくないという。

 

一度で終わっていないこと。

100万円ぶんまで止まらなかったこと。

もしこれらが立件されたら、上記の基準に合っているように見えるところはある。

 

一方、計画的な犯行だという声もある。

実際、供述のほうにも引っかかるところがあった。

「更衣室で拾った」という言い方だ。

落ちていたものを拾って自分のものにした場合、それは遺失物横領という別の罪になる。

上限は1年以下の拘禁刑で、これは懲役と禁錮をひとまとめにした新しい呼び方である。

一方、鍵を開けて中から抜き取ったのであれば窃盗で、こちらの上限は10年以下だ。

同じ1枚のカードでも、どうやって手に入れたかでこれだけ変わる。

 

「拾った」という3文字が置かれているのは、ちょうどその境目である。

そこを選んで供述しているのだとしたら話がまた変わってくる。

窃盗の目的ははたして…

お金に困ってやったのだろうか、という話も出ていた。

報道で出ているのは、住まいが世田谷区で、慶応大学の4年生だということくらいである。

ただ、ネットで言われている帰国子女という話が本当なら、子供の頃に海外で暮らしていた時期があることになる。

そこから戻って慶応まで通わせているわけで、それなりに余裕のある家庭であることは想像に難くない

 

使った金額のほうも、生活のためという感じがしない。

家賃や食費に困っていたのなら、買うものが化粧品にはならないだろう。

では、なぜ4か月も続いたのか。

最初の1件が4月5日で、逮捕されたのが8月17日。

そのあいだに被害は一人では終わらず、総額100万円ぶんまで積み上がっているということらしい。

 

ここで効いてくるのがマスターキーの存在だ。

あれは受付の仕事道具で、忘れ物を出したり閉め忘れを確かめたりするために持たされる。

つまり、鍵を持っている人が鍵を使っていても、誰も変だとは思わない

それを悪用したのだからたちが悪い。

AO入試×SFC×帰国子女はヤバい?

ここでひとつ余談となる話だが、窃盗で捕まった学生が帰国子女ということが、別の方向でも燃えていた。

入学ルートである。

SFCというのは慶応の湘南藤沢キャンパスのことで、総合政策学部と環境情報学部が置かれている。

そこへ帰国子女枠のAO入試で入ったのだから学力は最下層だ、という言われ方である。

AO入試というのは、学力試験ではなく書類と面接で選ぶ入試のことだ。

 

正直、この手の話は、最初に書いた人自身が「情報は誤っている可能性があります」と注意書きを添えていたので何とも言えない。

実際、数字を調べてみると、おもしろいことがわかってきた。

叩かれている総合政策学部は、2025年の春に入学した376人のうち一般入試で入った人が284人

全体の4分の3で、指定校推薦にいたってはゼロである。

 

では慶応の看板と言われる学部はどうなのか。

経済学部は一般入試が約半分で、内部進学が4割近い

内部進学というのは、付属の中学や高校からそのまま上がってくるルートのことだ。

法学部にいたっては一般入試が半分を切っていて、内部進学と指定校推薦を足すと5割近くになる

つまり、一般入試を勝ち抜いた人の割合でいえば、叩かれているSFCのほうが慶応の中では高いほう。

ちなみにSFCの帰国生向けの入試は、2025年度の実施をもって終了している。

22歳で捕まったのは幸運かもしれない

ネットの声の中に、こんな受け止め方があった。

捕まって幸せ、というのは外から言うにはずいぶん軽い言葉に聞こえる。

就職活動の真っ最中で、いま失っているものだってかなり大きなものであることは間違いない。

 

ただ、窃盗症の治療にあたっている専門家は、刑務所で刑を終えるだけでは再犯は止まりにくいという言い方をする。

止めるには治療がいるとのことらしい。

そして治療というのは、見つからないかぎり始まらない。

 

冒頭で紹介した投稿にも、こんな一言が添えられていた。

「言い方は悪いけど、いい大学出て大手企業に勤めてから顧客の何かに手を付ける前だったのはせめてもの救いか」

きつい言い方ではあるが、言わんとしていることはわかる。

 

分別を通り越してしまった癖は、たぶん自分の意思では止まらない。

だとすれば、止まるきっかけは外から来るしかないことになる。

22歳という若さでの過ちとしてはあまりに大きなことだ。

しかし、そこで止められなければさらに大きな事件につながっていたかもしれない。

それを幸運と呼んでいいのかどうかは、まだ誰にもわからない。

ただ、まだやり直せる若さなので、腐らずに立ち直ってほしいと思う。