SNSで子どもを狙う大人の恐怖…巧妙なグルーミングの手口を解説
SNSで知り合った相手から性被害を受けた子どもは、2025年の1年間で1,566人にのぼった。
警察庁が毎年公表している統計の数字である。
単純に割ると、1日に4人以上。
ニュースで大きく報じられないだけで、毎日どこかの家庭で起きている計算になる。
最近、子どもを性的な目で見る人間の投稿をSNSで見てしまい、ゾッとしたという声をよく見かける。
子を持つ親なら、あの気味の悪さは他人事ではないはずだ。
今回は、子どもを狙う人間が実際にどれくらいいて、どんな手口で近づいてきて、親に何ができるのかを順番に見ていこうと思う。
SNSの子ども被害は年間1,500人超
この1,566人というのは、SNSがきっかけで事件の被害に遭った18歳未満の子どもの数で、前の年より5.4%増えている。
中身は児童買春や児童ポルノ、みだらな行為といったもので、その大半が性に関わる被害である。
児童買春というのは、金や物を渡して子どもと性的な行為をすること。
児童ポルノは、その様子を撮った写真や動画のことだ。
しかも近年は、小学生の被害が増える傾向にあるらしい。
なぜ小学生にまで広がっているのだろうか。
スマホデビューの年齢がどんどん下がっているのだから、狙う側の手もそこまで伸びてきた、ということらしい。
「スマホを持たせるのはまだ先だから大丈夫」
という感覚は、もう通用しなくなっているのだ。
こういった犯罪の入り口も、出会い系のような分かりやすい場所とは限らない。
オンラインゲームのボイスチャットや動画のコメント欄のように、子どもが普通に遊んでいる場所のすぐ隣に、狙う側は網を張っている。
そして、この数字には続きがある。
1,566人というのは、事件として発覚し、警察が動いた数にすぎない。
自分が被害に遭ったと気づいていない子、怖くて誰にも言えなかった子は、この数字の外側にいる。
本当の被害は、この何倍もあると見るのが自然だろう。
ネットでは「うちの子のDMにも知らない大人から連絡が来た」という親の声が珍しくない。
子どもを性的な目で見ている投稿を見かけてゾッとしたのなら、それは考えすぎではない。
子どもを狙うペドフィリアの実態
最近、ようやく認知されてきた言葉に「ペドフィリア」というものがある。
日本語にすると小児性愛。
子どもを性的な対象として見る性癖のことで、そういう人間を指す言葉としても使われている。
ネットでは、さらに縮めて「ペド」と呼ばれることも多い。
名前を知らないものは、目の前にいても見えない。
この言葉を知っていれば、SNSで異様なアカウントを見かけたときに「ああ、これか」と気づける。
知らなければ、そのまま画面をスクロールして見逃してしまう。
こういう歪んだ性癖を持つ人間は、映画に出てくるような分かりやすい不審者の顔をしていない。
昼間は普通に働き、普通に笑って暮らしている。
その同じ人物が、夜になるとスマホの向こうで子どもを探しているのである。
そして、狙われるのは女の子だけではない。
男の子も普通に狙われるというから怖ろしい。
「うちは息子だから大丈夫」という線引きは、この件に関してはまったく通用しない。
さらに気味が悪いのは、そこに仲間がいるという点だ。
SNS上には、同じ性癖を持つ人間同士がつながるコミュニティが実在する。
そこでは子どもを性的な目で見ることが「普通のこと」として語られていて、互いに「わかる」と肯定し合っている。
一人でいたら「さすがにこれはおかしい」と踏みとどまれたかもしれないのに、同じ趣味の人間が何十人と集まった部屋の中では、その感覚がどんどん麻痺していくわけだ。
正直、書いていて気分が悪くなってくる。
ところが、この話にはもっと『嫌な続き』がある。
そういう連中のアカウントを見つけて通報しても、消えないことがあるのだ。
理由は単純で、日本の児童ポルノ禁止法が罰しているのは、写真や映像といった目で見える形のものだからである。
どれだけ醜悪なことを書いていても、文章だけならこの法律の網にはかからないケースが多いのだ。
もちろん、画像のやり取りや金銭が絡めば話は別で、児童ポルノ禁止法や児童買春の罪で普通に逮捕される。
2014年の法改正では、人に売るつもりがなくても自分で楽しむために持っているだけで罪になった。
1年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金である。
拘禁刑というのは、2025年6月から懲役と禁錮をひとまとめにした呼び方だ。
ただ、そこへ至る手前の「眺めて品定めをしている段階」を止める手立てが、いまの日本にはほとんどない。
SNSの運営が規約違反でアカウントを凍結することはあるのだが、消されたところで新しいアカウントを作り直せばいいだけなので、結局はイタチごっこになる。
通報したのに投稿が残り続けるのは、そういうカラクリなのだ。
巧妙なグルーミングの手口とは
では、こういう人間はどうやって子どもに近づくのだろうか?
その手口には「グルーミング」という名前が付いている。
もともとは動物の毛づくろいを意味する言葉で、性的な目的のために子どもを手なずける行為を指す。
ここで怖いのは、入り口が脅しではなく、優しさだという点である。
流れはだいたい決まっている。
- ゲームや推しなど、子どもの好きな話題で「気の合う友達」として近づく
- 悩みを聞き、褒めて、「親よりわかってくれる人」の座に着く
- 「二人だけの秘密」を作り、周りに相談できない関係へ囲い込む
- 信頼しきった頃に、写真や面会を要求してくる
どこにも『怖い要素・脅し』が出てこない。
商品の話を一切せず、雑談だけで何度も通ってくる営業マンと同じで、本命の要求は関係ができあがるまで出てこないのだ。
だから子どもは、被害に遭っている最中も、それを被害だと思っていない。
それどころか、大事な人を守るつもりで親に隠すのだから、発覚が遅れるのも当然なのである。
大人が本気で騙しにきたら、子どもに見抜けというほうが無理だと僕は思う。
最近、国もようやくこの手口に追いついた。
2023年の刑法改正で「面会要求罪」という罪が新設され、わいせつ目的で16歳未満の子どもに会うことを要求した時点で犯罪になった。
要求しただけで1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、実際に会ってしまえば2年以下と、段階を追うごとに罪が重くなる仕組みだ。
性的な写真を送るよう要求する行為も、この法改正によって罪に問えるようになった。
俗に「グルーミング罪」とも呼ばれている。
写真を1枚でも送ってしまうと、話はもっと悪くなる。
近年目立つ「自画撮り被害」がそれで、画像を1枚送らせた時点で子どもは人質を取られたのと同じ状態になる。
「言うことを聞かないとばらまく」と、脅す材料に変わるからだ。
この構造は闇バイトも同じなのだが、今は子どもが実際に会いに行ってしまう前に捕まえられるようになったのだから、これは大きい。
ただ、法律がいくら進んでも、親が異変に気づけなければ始まらない。
では、親のほうで気づけることはあるのか。
- 親が近づくと、スマホの画面をさっと隠す
- 深夜にやり取りしている相手がいる
- 買った覚えのないプレゼントやゲーム課金が増えた
- 「ネットの友達」の年齢や素性を聞くと、答えをぼかす
どれか一つで即アウトという話ではない。
ただ、複数が重なったときは、その「友達」の正体を一度疑ってみてほしいと思う。
親が子供にできる防衛策について
まず、これだけは言っておきたい。
意外だと思うかもしれないが、スマホを取り上げるのは一番やってはいけない手である。
頭ごなしに禁止された子どもは、親に見つからないところで別のアカウントを作るだけなのだが、そうなるといざ何かあったときに親へ相談する道まで一緒に塞がってしまう。
「誰にも言えない」こそ、グルーミングの一番の燃料だからだ。
見張るより、決めごとを作っておくほうが効く。
- 知らない人からDMを受け取れない設定にしておき、年齢に応じて見直す
- 「ネットの人と会うな」ではなく「会う前に必ず親に言う」を約束にする
- 「何を見せられても、あなたは絶対に怒られない」と先に宣言しておく
「するな」と決めたことを破った子どもは、破った事実そのものを隠しにいく。
けれど「言いに来い」と決めておけば、たとえ約束を破って会いに行ってしまった後でも、子どもには帰ってくる場所が残る。
そしてこの話は、スマホの中だけでは終わらない。
銭湯や温泉の話である。
国は2020年に公衆浴場の基準を見直し、混浴させない年齢を「おおむね10歳以上」から「おおむね7歳以上」へ引き下げた。
いまはほとんどの都道府県で、7歳以上の男女を混浴させてはいけないことになっている。
7歳といえば、小学校に上がったばかりの年齢だ。
背景には、子どもの羞恥心が7歳ごろまでに育つという研究や、混浴をめぐるトラブルの防止があるという。
裏を返せば、7歳の子どもにすら性的な視線を向ける人間がいるという現実を、ようやく制度の側が織り込んだ形と言えるだろう。
小さな娘を連れたお父さんが、一緒に男湯へ入る。
あの当たり前の光景の裏で、そういう視線が問題になっていた。
だから銭湯や温泉では、こう考えておきたい。
- 自分で異変を訴えられる年齢になるまで、子どもだけで入らせない
- 脱衣所でスマホを構えている人間を見たら、ためらわず店の人に伝える
- 混浴年齢を過ぎた親子は、家族風呂や貸切風呂という選択肢を使う
盗撮は、いまや銭湯・プール・イベント会場のどこでも起きている。
「そんな目で見る人間がいるとは思わなかった」では、もう子どもを守り切れない。
最後に、通報の話もしておきたい。
子どもを狙う投稿やアカウントを見かけたとき、各SNSの通報機能には「児童の性的搾取」を専門に扱う区分がある。
それとは別に、警察庁から委託を受けた「インターネット・ホットラインセンター」という窓口もある。
ここは受け取った情報を警察やサイトの運営者へ回してくれるところで、どちらも匿名で、数分あれば終わる。
通報フォームで必ず埋めるのは、見つけた場所とそのURLの2つだけ。
名前もメールアドレスも任意なので、身元を明かさないまま出せる。
ただし、ここは通報を受け付ける窓口であって、話を聞いてくれる相談先ではない。
子ども自身の被害の相談なら、警察相談専用電話の「#9110」も覚えておいて損はない。
事件や事故になる前の段階でも使える全国共通の番号で、平日の昼間なら住んでいる地域の警察の相談窓口につながる。
110番するほどではないけれど、どこかに話しておきたい。
そういうときのための番号だ。
見て見ぬふりをする大人が減るほど、ああいう連中の居場所は確実に狭くなる。
子どもを狙う人間は、残念ながら、これからも消えないだろう。
ただ、狙いにくい子どもにすることはできる。
子どもを守る最初の壁は、警察でも法律でもなく、隣にいる大人なのだ。
子どもが狙われない社会になってほしいと、心から願うばかりである。