2021年12月28日。
9歳の男の子が大型トラックにはねられて亡くなったというニュースが流れてきた。
40代にもなってくると、こういう子供の事故を耳にする度に心痛な気持ちになる。
このニュースのコメント欄では「運転手を責めるのは可哀想」という声が多く、正直、なんか冷たい世の中だなと思ってしまった。
結局、そういう冷たい社会がこのような事故につながっているのだ。
今からその理由を話そうと思う。
目次
9歳男児がトラックにはねられる事故(名古屋市港区)
事故があったのは2021年12月28日午後一時半過ぎ。
場所は名古屋市港区野跡2丁目。
片側3車線で中央分離帯のある道路を歩いて渡っていた9歳男児(小学3年生)を、走行してきた大型トラックがはねてしまう事故が起きた。
9歳男児は意識不明の状態で病院に搬送されたが、およそ3時間後に息を引き取ったとのこと。
事故現場には横断歩道はなく、現在、大型トラックのドライバー男性(52)から事情聴取をしていると報じられていた。
ドライバーに同情する声
このニュースのコメント欄には、ドライバーに同情する声が多く寄せられていた。
各メディアで上位にきているコメント欄は以下のとおりだ。
【メ~テレ(名古屋テレビ)】
【FNNプライムオンライン】
【中京テレビNEWS】
【東海テレビ】
コメント欄に何を書こうが別に自由である。
しかし、このような意見ばかりが強調されると、いくら中央分離帯のある広い道路であっても、飛び出してくる子供のリスクを考えなかったドライバーにも非があるだろうと思ってしまう。
そこには落下物があるかもしれないし、一般道である限り何らかの対応をする意識はあって然るべきだからだ。
前に車が走っていたなら、ちゃんと車間距離は取っていたのか?
前に車が走っていなかったのなら、注意確認を怠っていたのではないか?
見通しの良い広い道路だからこそ、逆にそういう疑念が頭に浮かんでくる。
「大型トラックは急には止まれないから」と言う大型トラックドライバーのコメントもあったが、たしかにそれもわかる。
それでも、そういうことを理解した上で安全運転をし、急な対応のできる運転をすると誓った上での大型ライセンスではないのかと思う。運転を生業にしているのであればそれはなおさらのことだ。
もちろん、誰もそこまで意識してないし、そんなことを言ってたら運転できない(仕事ができない)という反論もあるだろう。
であるならば、子供がイレギュラーな行動をしてもお互いさまじゃないか。
子供と大人の『注意力』『判断力』を考えれば、車を乗る時は大人のほうが子供の何倍も注意を払って運転しなければならない。
なのに「子供がルールを守らないのがよくない」「3車線の道路なんて普通渡ろうとしない」「親がそのルールを教えないのがよくない」って、大切なわが子を失った親御さんがどれほど悲しみに暮れているか…。
正直言うと僕だって、被害者が中学生・高校生ならまた意見も変わると思う。
でも、まだ9歳じゃないか。
注意確認ができる子もいる。けど、そんなのわからない子もたくさんいるよ。
「ドライバーは悪くない」「ドライバーが気の毒だ」って。
もちろんそれはわかるんだけれども、あまりにも亡くなった子供や親への配慮がないような気がして、世の中がすごく冷たい社会のように感じてしまった。
今、社会がギスギスしてきている
今回の名古屋の交通事故について、思うことがある。
それは『今、社会がギスギスしてきている』ということだ。
トラックドライバーというのは長時間労働をしていることが多い。荷物だって積載量ギリギリまで積まなきゃ儲けが出ない。重量がギリギリだとブレーキも効かなくなるわけだが、実際、トラックというのは危険察知してから急な対応が難しかったりする。
また構造上、死角も多いため、余程安全には気をつけなければならないのだが、納品や回収の時間が決まっているために急いでいることも多い。
トラックというのはスピードを落とすと、安定速度までスピードを出すまでにパワーがいるので、普通の乗用車よりもアクセルを踏まなきゃいけない。坂道などはそれが顕著だ。
だからスピードをあまり落としたくないというトラックドライバーは多い。
要するに、あまり余裕がない状態でトラックというのは走っているわけだ。
そして子どもたちだが、子育てしている親たちも共働きが多く、世の中のルールを学ぶ機会が不十分だったりする。
今回のニュースでは親御さんが近くにいたという情報はなかったので、おそらく9歳男児が一人だったか、友達と一緒にいたかという感じだったのだろう。
9歳なんてまだまだいたずら心や好奇心が強い年頃だし、自制心のコントロールだってまだできない。
いくら横断歩道を渡りましょうといっても、その時の状態や状況次第ではどんな行動をしてもおかしくない。
こちらのグラフは『歩行者の年齢別死傷者数』だが、小学校低学年6-9歳辺りは非常に交通事故が多いのだ。
親からも手が離れる年齢だが、特に7歳は『魔の7歳』と呼ばれるくらい交通事故に巻き込まれることが多い。
じゃあ、言えば聞き分けてくれるのかというと、全員の子供が全員そうというわけではない。それは子育てをしたことのある人ならわかる話だと思うし、自分の子供のころを振り返れば、自分なり友達なり思い当たる節はあるんじゃないだろうか。
いま、子育てするにしても、親がちゃんと子供に言い聞かせる時間や精神的な余裕がないことも多い。
トラックドライバーも、子育てしている親も、親に構ってもらえない子供たちも、皆、それぞれに大変なのだ。
ニュースのコメント欄に書き込む人たちも、きっと何かしら大変なものを抱えている。
だから誰も余裕がない。
こんな社会に誰がしたのかはわからないが、未来ある子供が交通事故で命を落とした時に交通罰の軽減ばかりが叫ばれる世の中では何もよくならない。
それが叶ったとしても、ドライバーの交通意識は今までと何ら変わらず、きっとまた別のところで被害が生まれるだけだ。
この世を生きやすくするのはルールではなく、誰もが人を思いやれる余裕を持てる社会を作ることではないだろうか。
人の悲しみに目を向けない冷たい世の中にしてはいけないのだ。
9歳の子供なんてすごく可愛い年頃だ。
将来の夢やこれから色んな経験が待っていて、親もまた我が子に愛情をかけその成長を楽しみにしていたはずである。
でも、まだたった9歳なんだ。大人社会のルールなんてわからないよな。
痛かったろう、苦しかったろう。
本当に本当にやるせない。
親御さんが、どうか早く立ち直れる日が訪れるようにと願う。
そして、9歳男児のご冥福を心よりお祈りする。