昨日、小学生の子供と『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』を観てきた。

公開は7月24日。

いつもなら公開すぐに映画なんていかないし、この手の映画は子供の付き添いでいくのだが、今回は話題になっていたので僕のほうから誘ったのだ。

結論から言うと、大人でも楽しめる内容だった。

ただ、僕のように子供がいて、これから観ようか迷っている人が知りたいことは、たぶん2つに絞られる。

子供と一緒に行って大丈夫なのか?

そして、なにがそんなに話題になってるのか?

今回はできるだけネタバレせず、この映画『ちいかわ』の魅力について書いていこうと思う。

口コミが渋滞している

いきなり感想を伝えるより、いまネットで何が起きているのかを整理しておきたい。

公開からまだ数日だというのに、感想の量が尋常ではないからだ。

まず目につくのが、この手の戸惑いである。

ほんわか系だと思って行った人が、次々と梯子を外されている。

そして、そのざわつき自体に引き寄せられる人が出てくる。

観れば「なるほど」となるのだが、これから観ようという人なら「いったい何が始まるんです?」という心境だろう。

大人のほうがくらう映画だった

実際、大人視点だと映画『ちいかわ』はどういう映画なのか。

ここが今回の本題である。

作品としては原作漫画でも人気の高い「セイレーン編」の映像化で、上映時間は99分。

チラシに釣られた一行が島へ渡るという、出だしだけ聞けば完全に夏休みの冒険ものである。

 

その冒険が、途中からどうなるか。

大人側の体験を、あまりにも的確にまとめた投稿があった。

初めてちいかわに触れた親の感想が、こういう並びである。

  • でてくる食い物がおっさん臭い
  • 娘が途中からママ怖い
  • 前の席の子供泣く

箇条書きがもはや事件の報告書みたいになっている。

そして、なんといっても効いてくるのが4番目だ。

上映後にざわついているのが子供ではなく保護者のほうという、この一行。

もう、ここに全部入っている。

 

感覚としては、ジェットコースターに乗ったつもりが、途中でレールがお化け屋敷のほうへ切り替わっていた、という感じに近い。

前半はちゃんとかわいい。

笑えるし、歌もいい。

そのぶん、後半で足元が抜ける。

子供はきゃっきゃ観られるのに、大人のほうが構成でグッときてしまうという、この落差。

僕もまさにこれで、帰り道で余韻を引きずっていたのは完全に僕のほうだった。

東野圭吾作品との意外な共通点

そして、SNSで感想をザッピングしていて気になったのが、東野圭吾作品との共通点だ。

これは面白い。

かわいい動物の映画の感想に、なぜミステリー作家の名前が出てくるのか。

「東野圭吾の原作でちいかわをやってる感じ」という一言だが、言われてみると、たしかに構造が似ている。

 

東野作品の後味の悪さは、悪人が暴れてどうのこうのというものではない。

むしろ逆で、それぞれに事情があって、それぞれが自分なりに正しく動いた結果、誰も救われない形になったときに来ると思っている。

たとえば『容疑者Xの献身』がまさにそんな感じだ。

犯人を憎めないから、こちらの気持ちの置き場所がなくなってしまう。

この「置き場所のなさ」が、今回のちいかわにもあると思うのだ。

「良質な子供向けの東野圭吾」

「若干マイルドにした湊かなえ」

比較対象がどんどん物騒になっていく。

 

そして面白いのが、その物騒さのおかげで、観ていない層の興味が爆発していることだ。

ちいかわにまるで縁がなかった大人が、東野圭吾という補助線1本で劇場へ向かっている。

宣伝としては、これ以上ないだろう。

しかも配給側が仕掛けたわけでもなく、勝手にそうなったのだから映画『ちいかわ』が如何にTVシリーズと違うかが伺えるのではないだろうか。

子供と観に行っても大丈夫なのか

ここまで読んで、不安になった親御さんもいると思う。

親として気になるのは、当然この一点だ。

「逆に子供と観に行っていいの?」という、この素朴な迷い。

いま日本中の親が、まったく同じことを検索していると思う。

 

先に結論を言っておくと、僕は子供と一緒に行って問題ないと思っている

年齢の制限がかかっている作品でもない。

実際、小さい子でも最後まで楽しく観られたという声はちゃんと上がっている。

4歳も10歳も飽きずに観て、「楽しかった」。

ひとつの答えがここに出ている。

 

ただし、注意点がないわけではない。

ひとつは、怖がりの子だと途中でしんどくなる場面があること。

もうひとつが、地味にこれ。

作中に出てくる漢字に、ルビが振られていないという指摘だ。

低学年の子だと、物語の鍵になる言葉を読み落としている可能性がある。

つまり子供は話の一部を受け取り損ねたまま、純粋な冒険として楽しんで帰ってくるわけだ。

だからこそ子供は元気で、親のほうが静かになる。

はたまた、そこまで計算に入れてこの映画を作ったのであればなかなかのマーケティング手法だが、天才か?

 

ちなみに、僕みたいにちいかわを知らなくても楽しめるのかについても、触れておきたい。

これは断言してよくて、まったく問題ない。

キャラクターの名前を知らなくても話は追えるし、現に原作を1ページも読まずに行って、そのまま殴られて帰ってきた大人の声がいくつも上がっている。

むしろ予備知識ゼロのほうが、まともに食らうかもしれない(笑)

 

この構造、平成のクレヨンしんちゃん映画を思い出した人が多いのもうなずける。

『オトナ帝国の逆襲』がまさにそうだった。

子供は冒険活劇として観て、大人は途中からまったく別のものを受け取ってしまう。

同じ席で同じ画面を観ているのに、持ち帰るものが親子でぜんぜん違うのだ。

僕も子供と一緒にオトナ帝国のDVDを車で観たりするのだが、どうしてもひろしが記憶を取り戻すシーンで毎回うるっときてしまう。

そういった構造が、令和にちいかわの姿で再演されている。

ただ、これ以上言うと、実際に観た時の面白さ(?)が減るのでこれくらいにしておこう。

セブンのコラボ商品がおかしい

今回の話題を語るうえで外せないのが、セブンイレブンである。

公開に合わせてコラボ商品が並んでいるのだが、そのラインナップがおかしいという指摘もある。

目玉が、赤魚の煮付だ。

コンビニのアニメコラボといえば、普通はスイーツかドリンクだろう。

そこへ煮付け。

作中に登場する食べ物を再現したという、企画としてはまっとうな理由がある。

あるのだが、それにしたって渋い…。

 

問題はここからで、この煮付け、映画を観る前と観たあとで意味がまるっきり変わってしまう

中身は伏せるが、劇中でこの煮付けが背負っている役割を知ってしまうと、パッケージを見る目が完全に変わるのだ。

観た人たちが煮付けの真意に気づいて阿鼻叫喚になっているという、字面だけ見ると意味不明な事態が起きている。

公開前は飛ぶように売れていたのに、公開後になぜか売れ行きが鈍ったという話まで出ているらしい(笑)

ネットでも「もう食べられない」という声もあるそうだが、ここまで来るともはや壮大な仕掛けである。

だから、これから観る予定の人には先に煮付けを食べておくことを強くおすすめしたい

順番を間違えると、冷蔵庫の中で消費期限とにらめっこすることになる。

最後がヤバいと言われる理由

最後に、いちばん検索されているであろう部分にも触れておこう。

結末そのものはネタバレなしでいくので、最後まで読んでもらって大丈夫だ。

 

「最後がヤバい」と言われている理由は、大きく2つあると見ている。

ひとつは、物語の決着のつけ方だ。

すでに察していると思うが、この映画はわかりやすい勧善懲悪で終わらない。

悪い奴が倒されてめでたし、という形を取らないので、観たあとに気持ちの持っていき場がなくなってしまう。

さっきの東野圭吾の話が、ここへ繋がってくるわけだ。

 

そしてもうひとつが、これである。

エンドロールが終わったあとに、まだ続きがある

ここで席を立った人と、最後まで座っていた人とでは、この映画の印象が別物になってしまう。

だから、これだけは言っておきたい。

途中で絶対に帰らないこと

この記事で役に立つ情報があるとすれば、たぶんここである。

 

では、その「ヤバい最後」を子供のほうはどう受け取っているのか。

それを見事に表しているのが、この親子のやりとりだった。

最後どうなったと思う、と聞かれた娘さんの答えが、「あきらめてくれた!」

……うん。

いまはそういうことにしておこう。

  • 子供にはそう見えている
  • 親にはまったく別のものが見えている

この一場面に、この映画の性格が全部詰まっている気がする。

 

真実に気づくのは、何年後になるのだろうか。

たぶんその子は大人になってからもう一度この映画を観て、あの夏の劇場を思い出すことになる。

あとから効いてくる一本を子供の頃に持っているというのは、なかなか悪くない話だ。

この夏、付き添いのつもりで劇場へ向かう人へ。

覚悟だけ決めて行くといい。

くらうのは、たぶんあなたのほうだ。

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